倫敦月/アラビア月

英国ロンドンとUAEドバイでの生活と見聞きしたこと、訪れた場所などのことを…

"Black Lives Matter" とマイノリティの恐怖

こんなカードを見つけました。

場所はロンドン西郊外の鉄道駅近くのバス停です。

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"Black Lives Matter" 「黒人の命を尊重せよ」

"Justice for George Floyd" 「ジョージ・フロイドに正義を」

 

手錠をかけられて身動きできない状態で、警察官に長時間首を膝で押さえつけられて黒人のジョージ・フロイド氏が死亡した事件(5/25、米ミネアポリス)に対する抗議メッセージです。

全米では連日、各地で激しい抗議行動が起きており、一部では暴動が発生しています。

ここロンドンでも昨日(5/31)、ロックダウン中にもかかわらず抗議行動があり、トラファルガー広場から米国大使館までデモ行進が行われました。

www.bbc.co.uk

恐らくこのカードはその参加者が用いたもので、帰宅時にこのバス停に置いたのでしょう。

"Black Lives Matter"は黒人への暴力に対する抗議のスローガンで、2013年アメリカで起きた警官による黒人少年の射殺事件が始まりです。

ja.wikipedia.org

 

国際都市ロンドンには様々な人種・民族的背景を持つ人たちが多く、差別的な事件、いやがらせ等も発生しています。

幸いにして私は未だあからさまな被害を受けたことはないのですが、差別を受けるマイノリティーの側である自覚があります。

そして、それを過熱させたのが欧州各地で起きたコロナウイルスによる東洋人差別と暴行事件でした。

(※下記のリンクには暴行で腫れあがった顔の写真が載っているので注意してください)

【新型コロナ】シンガポール人大学生、ロンドン中心で暴行被害 - Onlineジャーニー

 

こうして不安を募らせていた3月のある夜、会社から帰宅するため駅に向かって歩いていました。

突然、背後で奇声が上がったかと思うと、3人の男達(酔っていたらしい)が脇をバタバタと駆け抜けていきました。

 

それだけでした…

それだけだったのに、恐怖を感じ、動悸がしばらく治まりませんでした。

 

夜遅く、不安があるところへ、脇道から出てきたらしく不意を突かれたのです。

いつもの慣れた、明るく、人通りのある道でした。でも、これが自分を狙った何かであったらと、冷や汗が流れました。

たったこれだけのことですが、不安・恐怖というものが、いかに潜在的に人の心を捉えているかを実感しました。

 

アメリカにおける黒人差別の実態は私には想像するしかできません。

でも、彼ら彼女らが毎日の生活の中で感じている、逃れがたい不安、被差別感、恐怖は私の置かれた状況よりはるかに大きいでしょう。

警察官による暴力や殺人と呼べるような事案が繰り返し起きていれば、なおさらのこと。

それらの大きなストレス、不満が蓄積されていたところへ、今回の事件が着火点となり、一気に燃え上がったのだろうと感じています。

 

イギリスではこのアメリカの事件と抗議を連日大きく取り上げているのに対し、日本のニュースでの扱いは小さく、それに付いたコメントには的外れのものや嘲笑的なものすらあります。

こうして海外経験をしている者として、このギャップをどう考え、どう表現していくべきなのか…

まだ結論は見えてきませんが、考え続けようと思います。

 

(補足)

最初は"Black Lives Matter"を「黒人の命が大事」と書いたのですが、これは怒りを込めたメッセージだと考え、「黒人の命を尊重せよ」としました。

'matter'は動詞で"to be important or have an important effect on somebody/something"