倫敦月/アラビア月

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混乱翌日のウェスト・ミンスター (行き過ぎた人種差別抗議行動の痕跡)

これは今日(6/14)、ロンドン、ウェスト・ミンスター(West Minster, London)の国会前広場に落ちていたプラカードの残骸です。何と書いてあるのでしょう…

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今日のウェスト・ミンスターは明るく穏やかな初夏の日曜日そのものでしたが、昨日(6/13)はジョージ・フロイド事件を発端とする大掛かりな抗議行動がここで行われました。

混乱の中で警察官への暴行事件が発生し、100人以上が逮捕されました。日本での報道には一見、反差別デモが過激化したと思わせるようなものがあり、抗議行動を非難するコメントも見受けられましたが…

www.jiji.com

 

混乱の実態は極右グループが抗議行動への反対活動を行い、抗議参加者や警察と衝突したものと報じられています。つまり、平和的に行われようとしていた抗議行動を妨害、攻撃しようとしていた極右勢が暴力的に騒動を引き起こしたわけです。

www.bbc.com

(※日本のニュースでも多くは極右勢によるものと記事本文に書かれているのですが、見出しや書き出しでは誤解が生じそうでした) 

 

先週(6/6)の国会前広場での抗議行動は社会主義グループの行動が目立ちました。その反対勢力がチャーチル像を守るというのを口実に暴力に訴えた訳です。

発煙花火を用意して来て警官隊に投げつけるなど、故意犯としか思えません。過激なサッカーファンのフーリガン達も動員され、混乱が大きくなりました。 

pink-supermoon.hatenablog.com

(6/6のビラ。Socialist Partyによるもの)

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ハイドパーク等で行われていた抗議行動は平和的であったにも関わらず、そのイメージは大きく傷つけられました。結局、今日(6/14)の抗議行動への不参加を呼びかけざるを得ず、極右勢の高笑いが聞こえてきそうです。

その極右勢に付け込む口実を与えたのが、先週の抗議行動で起きたチャーチル像への落書きでした。

pink-supermoon.hatenablog.com

 

そのウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)の像の現状がこれです。

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完全に鋼板のカバーで覆われてしまいました。その前には何故か花束や食べ物が…

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この国会前広場には他にも数体の銅像があるのですが、同じく覆われたのがあと二つ。マハトマ・ガンジー(Mahatma Gandhi)とネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)の像です。 (英字名は像の台座に刻まれているもの)

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人種差別に関係するこれらの像も抗議行動で棄損されるのを防ぐためにカバーされました。

広場の他の像にも痕跡がありました。これは19世紀の政治家、ロバート・ピール(Sir Robert Peel)の像。黒いテープが残っています。

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同時期の政治家、ヘンリー・ジョン・テンプル(Henry John Temple, Viscount Palmerston)の像。左足の張り紙は6/6の抗議行動開始時にはありませんでした。

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行き過ぎた抗議行動がこれらの像への攻撃をも引き起こし、それが今回の混乱を呼び寄せたともいえます。

報道によって数はまちまちですが、差別的な過去があると非難されている像がイギリス中に数十の単位であり、チャーチル同様イギリスの英雄とされるトラファルガー広場のネルソンの像も標的にされているといいます。

 

こちらは国会前から続く官庁街、ホワイトホール(Whitehall)にある戦没者追悼碑、セノタフ(Cenotaph)。6/6には'BLM' (Black Lives Matterの頭文字)と落書きされ、この近くで夜遅くまで警官隊とデモ隊のにらみ合いが続きました。

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今回は台座部分を鉄板で覆って守っています。後ろの建物はイギリス外務省ですが、6/6に落書きされた"BLM"が見えます。"F**k pigs"と警察を豚に例えた罵倒の落書きもありました。

一部の過激な者たちの行為とはいえ、これらは先週の抗議行動の汚点といえます。

 

さて、冒頭のプラカードの残骸のメッセージはこちら。

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"Stop attacking my culture and history in the name of equality." 「平等の名のもとに私の文化と歴史を攻撃するのは止めて。」

 

その思いはもっともですが、その文化と歴史に不平等・差別的なものがあったのだとしたら、する側とされる側の溝は埋まりません。

かといって、その差別への抗議を理由に、不法的・暴力的に攻撃するのも、また分断を助長するものです。

歴史に目をつぶったり、利己的に解釈したり、一部だけを取り上げたり、一方的に非難するのではなく、事実を知り、多様な見方をした上で、現在と将来に向けた理解を目指すべきではないでしょうか。