キャプテン・ トム(Captain Sir Tom)のナイト叙勲
ロックダウン中のイギリスのヒーロー、「キャプテン・トム」がナイトに叙勲されることになり、今日( 7/17)、ウインザー城で女王陛下により叙任の儀式が行われました。
99歳のトム・ムーア(Tom Moore)さんが、爆発的に増えたコロナウイルス患者で危機に直面したNHS(国民医療システム)を支援しようと、自宅の庭を歩いて往復するというチャリティーの資金集めを始めたのが4月6日。
その真っ直ぐな志と、決して自由とはいえない身体を歩行器に預けてゆっくりと歩く姿が、コロナウイルスへの不安に苛まれていた人々の共感を得て、イギリスの国民的ヒーローになりました。第二次世界大戦の陸軍で大尉(captain)だったことから「キャプテン・トム」と呼ばれて。
100歳の誕生日を迎える4月30日までに、100往復と1000ポンドの募金集めを目標にしていましたが、100往復は4月16日に無事達成され、集まった募金は今日までに3200万ポンド(43憶円)を超えています。
さらにはミュージカル俳優のマイケル・ボールさんとのデュエット、NHSスタッフのコーラスで歌った"You'll Never Walk Alone"は、全英ナンバーワンのヒットになり、驚きの最高齢ナンバーワン歌手に! この曲もNHSへのチャリティーです。
4月30日の100歳の誕生日には、イギリス全土から祝福が送られ、3階級昇進に当たる名誉大佐の称号が与えられました。
ロンドンの街角でも、あちこちにキャプテン・トムへのお祝いが見られました。
この頃、近所の公園でランニングしていた私に、ビールを飲んで陽気にしていた若者たちが「きゃぴてん・と~む」 とかいって声を掛けるということがありました。
息が上がって大変そうにしていたこちらへの応援だったんですかね?
それはともかく…
今日の叙任式は、女王陛下にとってロックダウン開始から初の公式行事でした。
晴天のウインザー城の中庭で行われた叙任式で言葉を交わされましたが、その内容はキャプテン・トム、いや、キャプテン・サー・トム(Captain Sir Tom)の一人だけのものとして内緒にされています。でも…
コロナウイルスとの戦いを呼びかける女王陛下のTV演説があったのは4月5日。キャプテン・トムが歩き始めたのはその翌日。
コロナウイルスに感染したジョンソン首相が集中治療室に入り、イギリス全体が不安と恐怖に覆われていたときでした。
時を同じくしてイギリス国民を勇気づけた、94歳と100歳のお二方。75年前にも戦争という国難にあって、それぞれの任務で国に奉仕していたことを考えると、立場は大きく違えども共通する気持ちを交わされたのではないかと想像するのです。