倫敦月/アラビア月

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フェイスカバー、もといフェイスカバーリング? (Face Covering)

前回の記事でコロナウイルス対策のため、イングランドで買い物、公共交通機関での「フェイスカバー」が義務化されたと書きました。

正確には政府の通達には'face coverings'、つまり「フェイスカバーリング」と書かれています。

(イギリス政府の通達)

www.gov.uk

(この記事では「フェースカバー」と表記しました)

pink-supermoon.hatenablog.com

 

Oxford English Dictionaryで'covering'を引くと、名詞として"​a layer of something that covers something else" 「別のものを覆う平面状のもの」とされています。

なので、'face covering'はコロナウイルス感染防止のために鼻、口を覆うマスクなどの「もの」を指すわけです。'meeting'「会議」や'painting'「絵画」のような動名詞の普通名詞化でしょう。

 

一応、イギリスの英語でも'a face cover'などとingのない「フェイスカバー」の表現がないことはありません。ニュースでも使われていますし、ジョンソン首相やハンコック保健相らの発言にもあります。

www.thetimes.co.uk

 

Googleで"face cover"を画像検索すると、ちゃんとマスクが出てきます。例えば、

www.reebok.co.uk

 

でも、お店の注意書きは'face covering'の完勝でしたし、政府の広報、ニュースやネット上の表現もほぼ全てが'face covering'です。

f:id:Pink-Supermoon:20200726083507j:plain

 

名詞の'cover'の意味を引いてみると、"a thing that is put over or on another thing, usually to protect it or to decorate it"「通常、保護や装飾のために、ものの上に載せたり、付けたりするもの」とありますので、蓋のように上からすっぽり被せるもののイメージがあるかもしれません。

 

これをカタカナの日本語にする場合、「カバー」には本、車、スマホ、パスポート等を保護するカバー類があってイメージしやすい一方、「カバーリング」はそこまで一般的に使われている語とは思えません。なので、前の記事では「フェイスカバー」と書きました。

これを、いろいろな表記でググってみると、「フェイスカバー」がダントツです。

  • "フェイスカバー" 約3,390,000件
  • "フェイスカバーリング" 210,000件
  • "フェイスカバリング" 約3,000件
  • "フェイスカヴァー" 160件
  • "フェイスカヴァーリング" 4件
  • "フェイスカヴァリング" 3件
  • "フェースカバー" 約181,000件
  • "フェースカバーリング" 4件
  • "フェースカバリング" 約11,200件 
  • "フェースカヴァー" 1件
  • "フェースカヴァリング" なし
  • "フェースカヴァーリング" なし

「フェイスカバー」はマスクだけではなく、顔全面を覆うものや、日焼け防止用の商品として以前からあるので、件数が多く、イメージも容易だと思います。

 

さて、 この'face coverling'は5月にOxford Learner's Dictionaryに追加されたコロナウイルス関係の新語には入っていません。

英語圏において、フェイスカバーの着用が最近になって急に広がったことが実感できます。

pink-supermoon.hatenablog.com

 

なお、ingを巡る議論は、やはりコロナウイルス関係で使われるようになった'social distancing'にも当てはまります。

訳語の「社会的距離」を使わず、カタカナ語にするときに「ソーシャルディスタンス」とするか「ソーシャルディスタンシング」とするか。

後者は長すぎて落ち着きが悪いと感じたので、このブログでは「ソーシャルディスタンスを取る」といった表現を主に使っています。「距離を取る」だけで十分な箇所も多いかもしれません…