ホリデーメーカー達の憂鬱 (海外旅行計画はギャンブル)
夏のホリデーシーズン到来!
コロナウイルスで逼塞していたイギリス人たちもパブで楽しむだけではなく、例年の通り南欧などで過ごそうと、急遽、旅行に出かける人も沢山出ています。
イタリア、スペイン、ギリシア等の南欧各国は、夏場の観光収入が大きいので、コロナウイルス対策の入国規制も早々と解除して「いらっしゃい」と意欲満々でした。
イギリス政府も海外からの入国者に14日間の自主隔離を義務付ける規制を、特定の国に対して解除する' travel corridors'「旅行通路」を7月6日から始めました(イングランド限定)。コロナウイルス感染者が少なくなった国が対象で、ポルトガル、ノルウェーを除くヨーロッパの主要な国々が入っています(日本も)。
さっそく、予約して続々と出かけ始めたのですが…
やはりというか心配した通りというか、スペインやフランス等でコロナウイルス感染者が増加しています。特にスペインのバルセロナのあるカタルーニャ地方がホットスポットになってしまいました。
これにイギリス政府が素早く、しかも、突然対応しました。
7月25日土曜日の夕方、突如としてスペインからの入国者に14日間の自主隔離を、26日午前零時から再適用することを発表したのです。実施のほんの数時間前。違反者は1000ポンドの罰金です。
この決定・実施の素早さはさすがなのですが、スペインで週末を楽しんでいたホリデーメーカー(holidaymaker, イギリス英語で休暇で旅行する人, アメリカ英語ではvacationer)達はびっくりして怒り出しました。
人気のリゾート地であるマヨルカ島やカナリア諸島等ではコロナウイルスの流行は抑えられているのに、スペイン全土を対象としたことにも。
翌朝のニュースは怒り心頭の旅行者のインタビューや、旅行会社の当惑、保険は効くのか等の話題でもちきりでした。
間の悪いことに、イギリスのシャップス運輸相(Grant Shapps, MP, Secretary of State for Transport)は25日に家族と休暇でスペインに出たところでした。
リベラル寄りのThe Guardian紙が、こんな想像をしてみようと、こき下ろします。
"Shapps feels the pain in Spain on holiday from hell"「シャップスはスペインで地獄の休日の苦痛を味わっている」の見出しで。
("the pain in Spain"はミュージカル『マイ・フェア・レディ』の劇中曲"The rain in Spain "のもじり)
(奥様から)「あなたは運輸大臣だと思っていたけれど、このことを知ってたの?」
「保健相のハンコックが時間を間違えてゴメンっていってきたよ。でも、事前に知ってキャンセルしてたらインサイダーになっちゃうだろ?」
「何でコロナにかかる恐れのあるところに連れてきたのよ?」
「イギリスよりスペインの大部分の方が感染率が低いからむしろ安全だよ。」
「でも、スペイン全土を隔離対象にすることはなかったんじゃない?」
「それは思いつかなかったな。ゴーヴ(大臣)がスペイン全土にすべきだっていったんだよ。イビサ島(スペイン領)で休日を過ごした後、さらに2週間休みたいらしいんだ。」
この調子で続きます。もう、ブリティッシュ・ユーモアって…
実際には翌日のビデオ会議で航空会社にイギリス人帰国への協力をお願いする、職務に忠実なシャップス大臣…
Following the unexpectedly rapid rise in Spain's #coronavirus cases, I held a video call with UK airlines + our Ambassador @HughElliottUK today in order to ensure close coordination to help UK nationals return from Spain. We will all need to quarantine for 14 days on arrival.
— Rt Hon Grant Shapps MP (@grantshapps) 2020年7月26日
フランス、ベルギー、ドイツ等でもコロナウイルス感染が増加しつつあります。
大人しく国内にとどまるか、自主隔離対象にならない方に賭けるか、自主隔離でも仕方ないと腹をくくるか。いずれにしても、今年の夏は悩ましい選択を迫られています。
悩ましいどころか、深刻なのが運輸・旅行業界。ようやくの旅行再開で息を吹き返したかというところに、一番の稼ぎ時を台無しにするこのショックです。当然、政府の対応を非難しています。
イギリス最大手の旅行会社トゥイ(Tui)はスペイン旅行をキャンセルにした上で、イギリスとアイルランドで166店の閉店、最大900人の削減を発表しました。
未だに営業再開できない旅行会社もあります。
実は、私もこのギャンブルを考えたのです…
元々は4月のイースター休暇の旅行予定があったのですが、ドイツのロックダウンで中止。予約していたブリティッシュ・エアウェイズ( BA, British Airways)のフランクフルト便は運休になったので、オンラインの申請で次回に使えるというバウチャー(Future Travel Voucher)に変えてありました。
これを利用しようと旅行を計画してたところ、オンライン予約ではバウチャーを使えないことが発覚。バウチャーの利用は電話予約でしかできず、その電話が全然つながらない!
結局、朝の受付開始時刻を少しフライングして電話をかけて、何とかつながって予約できました。その際、バウチャーの番号の他に、元の予約番号、こちらの名前、バウチャー取得時のメールアドレス、住所、前回予約時のクレジットカード番号と、次々と質問されて大変でした。
前回のフライトとの差額は放棄せざるを得ませんでしたが、予約は再変更できるとのこと。しかし…
そこへ、このスペインの自主隔離再開の事態です。行き先はスペインではありませんでしたが影響があったのか、往路便が突如キャンセルに。
またしても電話が必要になって、またしてもつながらない!
結局、またしても朝一番に電話して、30分以上待ってやっとつながり、今度は返金させました。
これがコロナ共存でのニューノーマルだとすれば、旅行計画にはギャンブルがつきものになってしまいます。やれやれ…