ロンドン地下鉄の広告が減っている?
久しぶりにロンドン中心部で地下鉄に乗って、ふと視線を上げると詩が目に入って来ました。TfL (Transport for London、ロンドン交通局)の広告で、"Poems for the Underground"「地下鉄のためのポエム」と銘打っています。
コロナウイルスで不安な時期にいい詩だなと思いながら改めて周りを見てみると…
乗客が少ないのと同時に、広告が少ないことに違和感を覚えました。窓の上の広告の多くはTfLによる注意書きや詩で、半分は何も表示されていません。商品やイベントの広告はごくわずかです。
(中央ドア左のオレンジ色の広告は「閉まるドアに注意」、右手窓上の広告はTfL自らのポスター展の案内)
地下鉄車内の詩は以前からあるのですが、これまでは他のポスターに埋もれて、目に入らなかったように思います。
Poems on the Underground - Wikipedia
駅はどうかと見ると、やはりTfL自らのポスターが目立ちます(丸に横棒が目印)。
既に終わった(というより、ロックダウンで中断した)ミュージカルや美術展のポスターが残っていたり。
地下から地上に向かうエスカレーターの横にも多数のポスターがあり、ロンドンの地下鉄の一つの特徴でした。これもTfLの標語集のように。
そして驚いたのが、KFC(イギリスではケンタッキーフライドチキンをこう呼びます)のバーガーの写真が載ったポスター!
というのも、TfLは肥満防止のためとして糖分、脂肪、塩分が多い「ジャンクフード」の広告を2019年2月に禁止したからです。以前に多く見られたファストフード店、バーガー、ジュース、スナック等の広告が一斉に姿を消しました。
上の広告はジャンクフードそのものではなく、その宅配サービスのものですが、規制開始の直後には、ベーコン、バター、ジャム、卵(!)の写真ですらダメと指摘された食品宅配サービスがあったほどです。
コロナウイルス対策のため人々の外出や通勤が減っています。利用者が少なければ、そこに広告を出すメリットは失われるでしょう。
広告主の企業でも、広告費を削減したところが少なくないと思われます。
TfLも収入が大幅に減り、コロナウイルスによる損失は40憶ポンド(約5500憶円)に上ると見込まれ、7000人の職員を自宅待機にするといった苦境にあります。
でも、志高く設定した規制をなし崩しにするようなことはどうか…
記事冒頭の詩(Cicery Herbert "Everything changes")では、こういっています。
What's happened has happened. それは起こってしまった
Poisons poured into the sea 海に毒薬は流れ出してしまった
...
but, everything changes. でも、全ては変わっていく
We plant trees for those born later. 後から生まれた者たちのために木を植えよう
コロナウイルスとの共存が避けられない今だからこそ、地下鉄の広告も未来志向でいて欲しいものです。