倫敦月/アラビア月

英国ロンドンとUAEドバイでの生活と見聞きしたこと、訪れた場所などのことを…

VJ Day 75 (対日戦勝記念日に何を見たか)

今日、8月15日はイギリスにおいては75周年の対日戦勝記念日(Victory over Japan Day)、VJ Day 75です。

日本が降伏し、第二次世界大戦が勝利で終わった記念の日として、イベントやテレビの特別番組がありました。

前の記事に書いた通り、今日、何を見聞きしたかを書きたいと思います。といっても、特筆すべき何かがあったわけではないのですが…

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イギリスの公式記念式典は、マンチェスターの北東、スタフォードシャー州の国立記念植物園(The National Memorial Arboretum)で行われました。緑豊富な植物園が戦没者追悼の場所になっています。 

Home | National Memorial Arboretum

チャールズ皇太子(Charles, Prince of Wales)とカミラ夫人(Camilla, Duchess of Cornwall) がジョンソン首相と共に参列し、2分間の黙祷の後、献花とスピーチを行いました

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その様子を中継するBBCの特別番組は、当時を知る方々の証言や東南アジアで何があったかを静かに語る内容で、緑の風景とマッチしていました。

証言者の方々は90代半ばから100歳で、この記憶を語ることができる最後の時期であることがわかります。

 

テレビニュースでは日本での戦没者追悼式における天皇陛下、安倍首相の映像が流れました。靖国神社を巡る問題を現地からの中継で伝えた番組もあります。

 

こちらの30代の知り合いと話したのですが、彼は今日が何の日かをまったく知りませんでした。

街を歩いてみても、5月8日のヨーロッパ戦勝記念日、VE Dayに見られたような家の飾りつけは見られませんでした。

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後刻、一つだけ見つけたのがこちら。テムズ河畔でのガーデンパーティーの跡のような感じです。

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VJのところに修正がありますが、どうやら最初にVEと書いていたらしく、VJ Dayが対ドイツ戦の記念日よりもかなり印象が薄いことがうかがわれます。

 

実は、この夕方にロンドン上空を英空軍の飛行チーム、レッドアローズ(The Red Arrows)が編隊飛行をする予定で、それを見に行ったのです。

場所はフラムからテムズ川に掛かるパトニー橋(Putney Bridge)。見通しの効く場所なのでかなりの人が集まっていました。

その中には退役軍人と思われる方がいて、その服装と胸の勲章、毅然とした態度としゃんと伸びた背筋が印象的です。

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ところが、予定時刻になっても赤い機体が現れません。この飛行は悪天候のために中止になってしまいました。下記のツイッターでそれを知って、この方にもお知らせしたのですが、残念だ、ありがとうと会話できたのは、今日の思い出の一つです。

 

そして、夜20:30からBBCでVJ Day 75の特別番組がありました。

ロンドン中心部、ウェストミンスターのホース・ガーズ・パレード(Horse Guards Parade)で行われたイベントの中継です。

軍楽隊のマーチのメドレー演奏から始まりましたが、その最後の一曲がクワイ河マーチ。このお馴染みの行進曲はイギリス人捕虜の収容所を舞台にした映画『戦場にかける橋(The Bridge on The River Kwai)』のテーマです。

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ウィリアム王子(William, Duke of Cambridge)の行ったスピーチでは、曾祖父であるジョージ6世の終戦時のスピーチを引用していました。

 

今年、様々な機会に聞いたヴェラ・リンさん(Dame Vera Lynn)の曲が、ここでも流れます。

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この番組では音楽と、対日戦での兵士や現地での日本軍占領を経験した人等の証言が交互に繰り返されました。全体としては祝賀ムードや勇ましい映像はわずかで、イギリス本国から遠く離れた東南アジアでの苦戦やジャングルでの苦労、日本軍による捕虜の過酷な扱い、日本占領下での市民の困窮や飢餓等が、やはり静かなトーンとイメージ映像で語られるというものでした。

日本人として違和感があったのは広島、長崎への原爆投下が戦争を終わらせたというナレーションでした。この後に続いた様々な意見の中には否定的なものもあったのですが。

 

このように、VJ Dayの当日にそれを感じさせるものは主にテレビ映像であり、それは当時を振り返り、記憶しようという内容であったという印象です。

終戦から75年。日本と同様に、イギリスでも第2次世界大戦の直接の記憶は薄れつつあるようです。

今日のイベントの数々は、それを残そうとする試みでしたが、従軍や現地で苦労された方々をリスペクトしながら、ことさらに勇ましさや悲惨さを強調せずに両方を伝えていこうという姿勢を感じました。