倫敦月/アラビア月

英国ロンドンとUAEドバイでの生活と見聞きしたこと、訪れた場所などのことを…

対コロナウイルスはどこまで徹底されているか (イギリスの規制取り締まりの実情)

一昨日、ジョンソン首相がTV声明で国民にコロナウイルス感染を抑えて冬を乗り切るため、ルールを守るようにと呼びかけました。生活を厳しく制限したロックダウンを回避して、経済、雇用、教育等が損なわれるのを防ごうというものです。

これを下記リンクの記事にまとめた際、実際に街中に変化があるか見ようと書きましたが…

pink-supermoon.hatenablog.com

 

残念ながら、地下鉄内のマスク(フェースカバー)着用義務の違反が減ったとは感じませんでしたね。

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ジョンソン首相が語った通り大多数の人たちはルールを守っているのです。でも、ルールを守らない人も確かにいます。

コロナウイルスは自分でもそうと気づかない少数の感染者から閉鎖された室内の多くの人達に移される恐れがあるもの。だから、マスクをすることによって、そこに一緒にいる人を守るのです。

このポスターが訴えている通り。

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上記の記事で、首相声明を要約した際に省いた部分があります。それは、

"And to those who say we don’t need this stuff, and we should leave people to take their own risks, I say these risks are not our own."

「こんな対策なんて必要ない、感染するリスクなど個人に任せておけばいいという人に対して、私はそれはその人だけのリスクではないと言いたいのです。」

 

"The tragic reality of having covid is that your mild cough can be someone else’s death knell."

「もしもあなたがコロナウイルスに感染していたならば、あなたの軽い咳が他の誰かの死を告げる鐘になるかもしれないという悲惨な現実があります。」

 

これを防ぐためにルールの違反者には罰金を科し、取り締まりの警察を増員すると首相は語ったのですが、ここにも省いた箇所があります。

"We will put more police out on the streets and use the army to backfill if necessary."

「我々(政府)は街により多くの警察を配します。さらに必要ならば軍隊で補います。」 

 

マスクをする程度の守りやすいルールに限られた警察のマンパワーをさらに割くようなことをしてほしくないし、さらに軍隊を投入するような強圧的な事態を想像したくはありません。

 

ボリスもルールを厳しくすることに対する抵抗感は理解しています。

"But we have to acknowledge this this is a great and freedom-loving country ..."

「我々はこの国が偉大にして自由を愛する国であることを認識しています…」 

 

"And of course I am deeply, spiritually reluctant to make any of these impositions, or infringe anyone’s freedom ..."

「もちろん、これらの規制や誰かの自由を侵害することには、私も気持ちとしてはとても抵抗があるのですが…」

 

なので、規則や罰則という強制ではなく、一人ひとりの意志の力を信じたいのでしょう。締めくくりとして、国民にこう呼びかけました。

"But now is the time for us all to summon the discipline, and the resolve, and the spirit of togetherness that will carry us through."

「今こそ、自制、決意、そして苦難を乗り切るための連帯の精神を、私たち全員が呼び覚ますときなのです。」

 

でも、現実は言葉の力だけでどうにかできるものではないのかもしれません。

思い起こせば、7月にパブ・レストランが再開したときのルールは、ソーシャルディスタンス(人との距離)は2m取るべきところ、取れなければマスクや衝立を使って1mまで緩和する、'1 metre plus'というものでした。

pink-supermoon.hatenablog.com

 

でも、実際にオープンしてしばらくしたら、そんなルールは忘れられたかのようになったのをあちこちで見かけました。

パブではカウンターや壁際にグラスを置いた立ち飲みスタイルで話に花を咲かせることが多いのですが、今回の規制強化でそれは禁止になり、テーブル席だけになりました。これでお店が受け入れられる客数が大幅に減ることになります。

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 また、マスク着用義務違反の罰金は初回100ポンド、繰り返すと最高3200ポンドになるという規則でした。

pink-supermoon.hatenablog.com

 

これで取り締まられた人がどの程度いたかというと、この記事によると警察発表ではわずかに46件(内、公共交通機関では38件)。これとは別にロンドン交通局発表の分が285件です。

www.telegraph.co.uk

10人に一人程度はマスクをしていない人がいるかもしれないのに、2ヶ月半でたったこれだけ。1日にわずか4人程度ではルールの破り得なのでは?

 

お店でのマスク着用も店には強制させる権力はなく、違反者がいても警察がいなければ罰金が適用されることはありません。

また、コロナウイルス感染者が少ない特定の国を除いて、外国から入国した人は2週間の自主隔離が義務化されていますが、これも追跡調査がほとんどされていないというニュースがありました。

 

結局、急に設けた規則に取り締まりが追い付いていないのが現状だったわけで、この夏の気のゆるみも加わって、感染者の急増を招いた原因の一つだったように思えます。

 

政府はこれから取り締まりを厳しくしていくのでしょう。違法なパーティー等の密告を推奨するような動きもあります。

あまりに締め付けが厳しくなりすぎて、反対運動が起きるような事態になっても困りますが、厳しいロックダウンをしないという道を取る以上、無法には断固とした処置が必要になってきているようです。