倫敦月

英国ロンドンでの生活と見聞きしたこと、英語についての関心事、そして他のヨーロッパ各地についても少々(のつもりです)

ロンドンのどんぐり・栃の実とリス

最近のロンドンの最高気温は概ね20℃から25℃くらい。下記の記事は急に冷え込んだときに書いたのですが、その後は少し例年よりも高い気温が続いています。 

pink-supermoon.hatenablog.com

 

上の記事に書いたどんぐりが色づいてきました。

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足元にもいっぱい落ちています。

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これらのどんぐりをつける木はオーク(Oak)と呼ばれるナラ(楢)の木です。

日本でよく見かけるコナラと比べると、葉のぎざぎざが丸くて大きく、柏餅を包んでいる葉っぱ(つまりカシワの葉)のようです。

 

どんぐりは英語で'acorn'。辞書を見ると"the small brown nut of the oak tree, that grows in a base that is like a cup"。どんぐりの帽子は英語でも同じと思ってよく見たら、capではなくてcup(カップ)でした(笑)

 

こちらの子供たちはどんぐりにあまり興味を示さないのか、通りかかっても見向きもしません。少し拾って、ポケットに入れておきます。

 

もう一つ、前の記事に書いた茶色くなりかけた街路樹を見上げてみると、木の実が見えます。

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足元にもあちこちに落ちています。

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一見、栗のようですが、これはセイヨウトチノキ(西洋栃ノ木)の実。

フランス語ではマロニエ(marronnier)と書くと、東京・銀座のマロニエ通りを連想するかもしれません。でも、実際に現地に植えられているのは日本のトチノキと、近種のベニバナトチノキのようです。このトゲトゲの実が落ちてくると大変だからでしょうか。

 

英語では'horse chestnut'、つまり「馬の栗」。栗(chestnut)と違って渋くて毒もあるので簡単には食べられません。

日本では長時間渋抜きをしてから餅に混ぜて食べられるようにした栃餅があります。『モチモチの木』に出てくるのですが、じさまは大変な手間暇をかけているのだよ >豆太

これも拾っておきます。と思って、うっかりトゲに触ってしまうとその痛いこと…

 

さて、拾ったドングリを近所の公園に置いておくと…

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リスが拾ってかじります。

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かわいいと思って近づくと、木の上に逃げたり。

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栃の実はどうか?

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大きすぎるのか渋いのか、咥えますがすぐにはかじらず、どこかに持って行きました。

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この通り、緑が豊富なロンドンにはリスがたくさんいて、身近な動物です。下記の記事で書いたハイド・パークやリージェント・パーク等、中心部の公園でもよく見かけるどころか、観光客がピーナッツ等をあげて近づいてくるのを楽しんでいたりします。

pink-supermoon.hatenablog.com

 

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かわいいリスたちと身近に触れ合えるのはいいですね…

 

とは、簡単にはいかないのです。

ハイド・パーク等にはリスに餌を与えないように注意書きがあります。

一つはリスにかじられる危険のためですが、他にも理由があります。

 

まず、これらのリスによる被害があること。リスたちは家の屋根裏を痛めたり、配線をかじったり、樹木や庭を荒らしたりします。

下記のリンクはロンドン南東のBromley区のサイトですが、リスをpestの一種として如何にその被害を防ぐべきかが説明されています。これに似た注意が他のあちこちの自治体にあります。

Squirrels | Common pests | London Borough of Bromley

 

'pest' ⇒ "an insect or animal that destroys plants, food, etc."「植物や食物等を傷める虫・動物」

語源はあの恐ろしい病気のペスト(英語はplague)なので、まさに害獣。

 

そして、ロンドンにいるハイイロリス(grey squirrel、より正確にはトウブハイイロリス)がアメリカからの外来種であり、イギリス在来のキタリス(red squirrel)を絶滅危惧種に追いやっていること。

詳しくは別の記事にしようと思いますが、ハイイロリスは対策すべき外来生物として政府のリストにも挙げられています。

www.gov.uk

 

なので、近所に落ちている木の実だからといって、そばに持って行くのはこれっきりですからね >リスの皆さん

プレットのコーヒーが月20ポンド (Pret A Mangerのコーヒーサブスクリプション)

ロンドンでよく見かけるカフェのチェーン店の一つが'Pret'「プレット」こと"Pret A Manger"「プレタ・マンジェ」。サンドイッチとコーヒーがメインのお店です。

店名はフランス語で、英訳すると"Ready to Eat"。つまり「お食事が用意できました」。

紅色と白の星が目印で、ロンドンの街中や地下街、ショッピングセンター等、いろいろなところに展開しています。

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公式ウェブページで数えてみたらCentral Londonに200店、Greater Londonにするとさらに40店なので、中心部に多いことがわかります。

そのウェブサイトによれば、1986年の創業以来、店内で手作りしたメニューと100%オーガニックのコーヒーを使命としているとのこと。コーヒーの売り上げで次世代のコーヒー農家を支援し、売れ残りはチャリティーにする等、社会貢献にも考慮したチェーンです。

https://www.pret.co.uk/en-GB/about-pret


そのプレットが新しく始めたサービスがこれ。"Your Favourit Ceffees, Now Endless"「今ならお気に入りのコーヒーをお好きなだけ」って?

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これはコーヒーのサブスクリプション、つまり定額サービス。月額20ポンド(約2700円)でコーヒー類を1日5杯まで利用できるというもの(利用毎に30分間隔を空ける必要あり)。そして、何と最初の1か月は無料!

コーヒーもエスプレッソ、ラテ、カプチーノ等、いろいろな種類の本格的なものが楽しめ、アイスにもできれば、ミルク入りも当然可能です。そのコーヒーはバリスタと呼ぶ熟練者が抽出する香り高い本格的なもの。さらに紅茶やフラッペ、スムージーまでOKと嬉しいことづくめです。

これらのドリンクは2~3ポンドしますから、20ポンドの元はすぐに取れてしまいます。一杯はけっこうな量がありますし、それが1日5杯までフラット価格ですからね。

なので、このポスター。フラット・ホワイト(クリーミーなミルク入りコーヒー)を沢山飲んでもフラット・プライスだよとアピール。

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このサービスを利用するのは簡単で、下のリンクのプレットのウェブサイトから名前、Eメールアドレス、クレジットカード等を登録するだけ。登録が完了すれば、EメールでQRコードが送られてくるので、それをレジのスキャナーにかざすだけでOKです。

https://www.pret.co.uk/en-GB/your-pret

 

最初の1か月は無料で、その後は1か月毎の自動更新ですが、いつでも好きな時にやめることができます。いたせり尽くせりでは?

だから、このポスター。"Endless Pret coffees. Yeah, we read it twice, too."「プレットのコーヒーを好きなだけどうぞ。ハイ、自分たちも二度見しちゃいました。」

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このお店の、こんな洒落たブリティッシュ・ユーモアも好きなところです。

こんな食材を使ったポスターもこのお店ではお馴染み。

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こちらが主力のサンドイッチ。ボリュームたっぷりで具材も豊富です。

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他にもサラダやスープ、ホットサンド、フルーツ等もあります。

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と、こんな風にPRめいたことを書くのは別にインセンティブがあるわけではなくて、純粋にお得なサービスだなと思ったから。

そして、このイギリスらしいお店が好きだから…

 

今回の大盤振る舞いはロックダウンで客足が減ったのを回復させ、一緒に他の食品メニューの需要も呼びたいのでしょう。

 

ロンドンの中心街に多くの店を展開していたプレットは、コロナウイルスの影響で厳しいビジネスを強いられています。

下の写真はレストラン再開前の6月のロンドンの金融街シティーの平日のランチタイム。以前なら道の右側に小さく見える星の看板のプレットにも大勢のビジネスパーソンが出入りしていたはずです。

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ロックダウンが解除された今でも、在宅勤務を続けているオフィスは多く、客足は戻り切っていません。苦戦中のプレタ・マンジェは3000人近い人員削減を発表しています。

 

なので、このサンドイッチ発祥の地のイギリスのカフェチェーンを応援したい気持ちもあってご紹介した次第。日本で利用していただけないのが残念ですが…

再開した大英博物館に行ってみた

ロックダウンで長らく閉館中だった大英博物館(The British Museum)が8月27日から再開しました。コロナウイルスとの共存の今、どんな風になっているのかを見てきました。

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大英博物館はロンドンで最も人気のある観光名所の一つですが、人数制限のため完全予約制になっており、インターネットで事前予約する必要があります。

www.britishmuseum.org

この大英博物館のウェブページから、Plan your visit→Book nowと進んで、希望日、希望時間、チケット種類と人数の入力、バスケット確認、チケット送付先入力(名前、住所、電話番号、Eメールアドレス)と進んで予約します。

予約状況を見てみると、直近の週末は売り切れのことが多く一週間以上前もって予約する必要がありそうです。売り切れといっても、大英博物館は入場無料ですから気楽に予約している人がいるのかもしれませんが。

なお、大英博物館は5ポンドの寄付をお願いしており、その寄付を含んだ予約も可能です。私はメンバーとして年間64ポンドを支払っています。

予約が完了するとこんなチケットのPDFがEメールで送られてきます。

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入口は南側の正面玄関のみで、ゲートで予約日時であることスマホで見せて入りました。手荷物チェックの後、建物入口へ向かいます。

建物正面はこんな感じ。この機会に工事をしているらしくシートで覆われており、建物の絵が貼られて、作り物みたいになっていました。

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建物入口から入って左手に行くと、チケットチェックのカウンターがあり、スマホに表示したチケットのPDFをスキャンしてから順路に進みます。

中は下記のマップのように完全に一方通行になっていました。

一番人気の古代エジプト等は公開していますが、上階は閉鎖中のため、中東、アジア、ヨーロッパ等は見られません。人気の展示だったエジプトのミイラやルイス島のチェス駒は見られず、中国、日本、中東等の展示室にも入れません。

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順路のスタートは大人気のロゼッタストーンです。いつもは大勢の人が貼り付いている展示ですが、人数制限のためゆとりを持って見ることができます。足元にソーシャルディスタンスの目印がありますね。

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ここから順路に沿って進むと、エジプトの半分→アッシリア→ギリシャ・ローマ→エジプトの残り半分というという風になります。一方通行にするための苦肉の策でしょう。人が少ないのでじっくりと見ることができます。

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一部、アッシリアのレリーフやアテネのパルテノン神殿の履歴等が展示されている行きどまりの小さい部屋には入ることができませんでした。

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庭に抜けるドアは開けられ、通路にはファンがあって、換気に気をつかっていました。

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公開しているスペースが減っているので、その分、いつもは駆け足で通り過ぎてしまいがちな展示室にも時間をかけることができます。

ここはギャラリー"Enlightenment"。大英博物館の設立当時の雰囲気がわかるようになっています。世界中から集められた標本があり、「博物学」とはこれだという感じ。

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ロゼッタストーンのレプリカが置いてあって、ガラスケースに入っている本物の代わりに触ることができます。

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残念ながら2階以上の展示室は閉鎖中のため、エジプトやメソポタミア等のミイラや小型の収蔵品、ルイス島のチェス駒を含むイギリス、ヨーロッパのコーナー、イスラム圏、中国、日本等の展示は見ることができません。f:id:Pink-Supermoon:20200913221506j:plain

 

中央ホールにあるカフェ、ショップは営業していています。

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見られなかった上階の展示品に関連したお土産品にも出会えます。

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このように展示が限定されていたり、移動に制約があるとはいえ、それでも沢山の見どころがありますし、人が少ない分、ゆっくり説明を読みながら見ることができて楽しめます。大英博物館はすごいと再認識しました。

この記事に載せきれない展示もたくさんありましから、また別の機会にテーマ毎に書きたいと思います。

9月後半からは特別展も始まりますので、次の訪問も楽しみです。

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イギリスのコロナ感染急増とマスクを着けない人達

イギリスのコロナウイルス感染者が急速に増加しています。昨日からの24時間で新たに確認された感染者は3497人!

https://coronavirus.data.gov.uk/casesよりイギリスの1日当たりの感染者の推移

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 8月前半は一日当たり数百人まで減っていましたから、9月の感染者急増は脅威的です。

イギリスでは一人が新たに感染させる人数を表す感染係数Rを流行の指標にしています。

pink-supermoon.hatenablog.com

イギリス政府の推計によると現在の感染係数は1.0から1.2の範囲で、このままの状態が続くと、7日から10日で感染者が倍増するとのこと。

3月は感染係数が3程度でしたから、それよりはまだマシですが、9月から学校が再開された影響でさらに係数が増加する恐れもあります。今や感染の抑制が効くかの瀬戸際とのこと。

 

そして、新規感染者の内訳を見ると、20代が多いのが明らかです。

BBCニュース https://www.bbc.co.uk/news/health-54116939 より感染者の年齢別比較(オレンジ色が7/24-8/11、青が8/22-9/7)

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ハンコック保健相は感染流行の第二波が若者から始まったスペイン、フランスの例を挙げて、感染防止のルールを守るように呼びかけました。裏返せば、若者のルール違反が感染を増やしているといいたいかのようです。

テレビニュースではスペイン、フランスのリゾート地や繁華街に集まって羽目を外している若者たちの映像を感染者増加のニュースの背景で流していましたから、そのイメージが広まってしまっているように思えます。

www.bbc.co.uk

これに対して、若者たちは自分たちだけが責められるのは不公平だといっているニュースもありましたが、実際のところはどうなのか?

 

ここからは個人的な印象の話です。

先週の平日の二日、ロンドンの中心部に地下鉄で出かけたのですが、先月との違いとして地下鉄の利用者が増えていることと、マスク等のフェースカバー(以下マスク)をしていない人が増えていることを感じました。

実際に9月7日の地下鉄利用者は前の週より10%増加したとのことで、職場復帰した人が増えてきているためと考えられます。

 

マスク着用のデータはわかりませんが、8月の前半には時々見かける程度だった着用していない人が、今回は各車両で普通に見かけるようになってきました。罰則付きで義務化されているにも関わらず。

人数が増えれば着用していない人を見るチャンスも増えるのでしょうけれど、感染に対する緊張感が薄れてきているのではないかと懸念してます。

そのマスクをしていない人の多くが若い人でした。若者の感染が増えているというニュースを聞いていましたから、年代に注目しながら、二日間に乗った7回の乗車中と駅構内でマスクをしていない人数を数えました。その結果は…

  • 20代以下の男性 22人
  • 20代以下の女性 5人
  • 30代以上の男性 7人
  • 30代以上の女性 2人 ※年齢は推測、ずらしている人を含む

圧倒的に20代と思われる男性が多いというものでした。

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この観察だけで20代の男性がコロナウイルス感染防止のルールを守らず、それが感染増加に繋がっていると結論することはできないのですが、印象がとても悪くなったことは間違いありません。

 

まあ、わからなくもないのです。

長かったロックダウンとその後も続いている各種の規制、これまで楽しんできた夏のイベントやレジャーの中止や禁止で若者が不満を持っても不思議ではありません。

しかも、コロナウイルスが重症化したり命の危険が生じるのは高齢者ほど多いわけですから。

「俺たちが楽しむのを禁じられるのは、高齢者のための犠牲なのか?」

「別にコロナウイルスに感染しても、多くは症状がないか、出ても大したことないのに?」

「行き過ぎた規制で経済が落ち込む方が問題じゃないの?」

こう考えてルールを守る気がしなくなっているのではないかと。

ますく不着用の罰則もあるのですが、取り締まりが厳しいわけでもなく、実感はないでしょう。 

 

政府の発言でも若者のメンタルヘルスに注意を払う必要があるとしています。

お互いに感染から守りましょうという意識付けだけでは、世代間の不満を解消することができなくなってきていると認識しているのでしょうけれど、それに加えるべき具体的な打ち手やゴールが見えないのが現状なのかもしれません。

(「マスクはあなたを守るために」とのメッセージ)

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イートアウトtoヘルプアウトは大好評(イギリスの外食半額補助制度のその後)

イギリスの外食産業支援策、"Eat Out to Help Out"(「外食で助け合い」の意)の期間が終わりました。

8月中の月・火・水曜日に外食費用の半額を政府が一人最高10ポンドまで補助する、つまり半額で飲食できるという制度で、下記の記事にもしましたが、その手軽さと身近さが大好評でした。

pink-supermoon.hatenablog.com

 

その成果を政府がまとめた結果がこのウェブページです。

www.gov.uk

予想を上回る1憶食以上の利用があり、180万人の雇用を援助するものであったと自己評価しています。

これまでの申請件数は13万件、5憶2千2百万ポンド(約730憶円)で、さらに増える見込みです。

月・火・水曜日のレストラン予約数を前年と比べると、7月は54%も少なかったのが、8月は一転して53%も増加しました。特に最終日の8月31日月曜日は休日だったこともあり、前年の2倍以上の予約があったとのこと。確かに、街のあちこちに長い行列ができていました。

そして、補助が終った9月1日火曜日のレストラン予約は前年より2%増加。7月が大きく落ち込んでいたことを考えると、需要が戻ったかのようです。

 

キャンペーンが終って、レストラン側も今後の利用急減を心配していない訳ではありません。

この勢いが続くことを望んで独自の半額キャンペーンを継続しているところがいくつもあります。

"Eat Out" extendedといったキーワードで検索すると、頑張るお店を紹介したページが見つかります。そして、このキャンペーンがお店側にも好評であったことがうかがえます。

www.bbc.co.uk

 

これはその一つ。ホームメードパスタのPasta Remoli (W5 2TD)。8月までと同じ月~水の50%割引を9月いっぱい続けてくれます。 

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こちらのインド料理店(Laguna, W13 9BD)も同じく9月の間延長するので、"Eat Out to Help Out"のステッカーを残しています。お酒は対象外ですが…

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この制度が発表されたときは、外食を少し割引するだけで、まるで"Meal Deal" (ミール・ディール、サンドイッチと飲み物のセット割引)だと陰口をたたかれましたが… 

(この記事の末尾に載せました)

pink-supermoon.hatenablog.com

 

結果的には外歩きの増える夏にうってつけの政策として広く受け入れられました。

このキャンペーンの顔ともいうべきリシ・スナク財務相(Rishi Sunak, Chancellor)はツイッターでこう語っています。

雇用を守るために、私たちは創造的かつ勇敢に、かつてどの国の政府も行ったことのないことを試みる必要があります。

レストランのオーナーやウェイター、シェフ、そして利用者の皆さんに対し、Eat Out to Help Outを受け入れ、景気回復を後押ししてくれたことに感謝します。

ここで「受け入れる」と訳した'embracing'の本来の意味は「抱きしめる」。もう大好きという感じがします。

そして、このツイートの動画には"Looks like you were hungry"「あなたお腹すいてたみたい」。ええ、1億食も出たのですからね(笑)

 

まさにユニークなキャンペーンであった"Eat Out to Help Out"は、不幸な年の明るい夏を盛り上げた出来事として記憶されると思います。 

そして、スナク財務相が次に力を入れている若年層の就職支援策「キックスタート」もよいスタートを切って欲しいと願います。

 

開始が遅れている日本の"Go To Eat"キャンペーンはさらに大きい2000憶円の予算が計画されていますね。ぜひ、広く活用され、誰もが楽しめる制度になりますように。

ホーンビー - 辞書を作った人 (オックスフォード英英辞典は日本発)

このブログで英語について書くときにお世話になっている辞書、Oxford Advanced Lerner's Dictionary (OALD)。日本での名称はオックスフォード現代英英辞典。

今、そのウェブサイトのトップページ(下記)に"The Man Who Made Dictionaries"「辞書を作った人」のタイトルで、この辞書を最初に作ったAlbert Sydney Hornby (アルバート・シドニー・ホーンビー、ニックネームはASH)が紹介されています。

www.oxfordlearnersdictionaries.com

 

そこには、より詳しいYoutubeの動画へのリンクもあります。

youtu.be

この動画で、ホーンビーが辞書を作るきっかけになったのが日本での英語教育だと知りました。以下に、動画からその経緯の部分を抜き出してみます。

 

1924年に新婚のホーンビーは日本に渡りました。大正ロマンの時代。日本は西欧文化をさらに取り入れ、アジアを中心として海外との接触も増えていった頃です。

大分高等商業学校(Oita Higher Commercial School、大分大学経済学部の前身)で英文学教師なったホーンビーは、学生たちがシェークスピアのような英文学を理解する力がありながら、英語を話すのには苦手なことに気づいたのです。

そこで、最新の英語雑誌の切り抜きを使って、生きた言葉の使い方を教えるようになりました。英文学から英語の教師に変わっていったのです。

さらに英語教育研究所の活動に参加した頃には、自分が見聞きした様々な言葉の用法を集めるようになりました。そして、何年もかけて集めたこの用例集をまとめて、1938年から英語学習者のための辞書の作成を始めました。

その辞書の表現には、ホーンビーが教室で教えていたときのような簡潔で簡単なものを用いました。この"keep it simple"の理念は、今日のOALDにまで受け継がれています。

 

この辞書を出版しようとしていた開拓社がインドのムンバイ(ボンベイ)に送ったささやかな広告が、この生まれつつある新しい辞書が世界に広がっていくきっかけになりました。オックスフォード大学出版局の編集者がその広告に目を付けて、サンプルを送るように請求したのです。

しかし、辞書が完成した1940年のヨーロッパは戦争の真っただ中。島国のイギリスを孤立させるために、ドイツ軍の爆撃機や潜水艦が輸送船を襲っていました。ホーンビーはサンプルの1部は直接郵送し、もう1部は大英図書館(British Library)の東京の役員から送ってもらうという手段を取りましたが、両方ともロンドンのオックスフォード大学出版局には届きませんでした。

 

さらに悪いことに、1941年には日本がアメリカ、イギリスに対して開戦。敵国人であるホーンビーはドイツ系修道院に抑留され、1942年に赤十字の捕虜交換船で国外退去となりました。ホーンビーの東京の自宅にあった資料は、その後の空襲で灰になりました。

しかし、ホーンビーは衣類に限ると指示された手荷物の中に、貴重な辞書のサンプルの1部を隠し持っていたのです。

 

戦争による物資不足のため、この脱出行がようやく辞書の形になったのは1948年。以来、Oxford Advanced Learner's Dictionaryはオックスフォード大学出版局のベストセラーの一つとなり、世界中の何百万人という英語学習者を支えているというわけです。

 

なお、日本に残ったホーンビーの最初の辞書は開拓社から "The Idiomatic and Syntactic English Dictionary"、現在の『新英英大辞典』として1942年に発行されています。

 

こうしてOALDの歴史を見てみると、この英英辞典が日本の学習者である私に使いやすい理由が理解できる気がします。

今では世界で最も利用されているオンライン辞書の一つになっているのも。英語はネイティブスピーカーだけのものではありませんからね。

 

日本でもオックスフォード現代英英辞典の人気・評価は共に高いですね。

この辞書の売り上げの一部はホーンビー教育基金として世界中の英語教師をサポートしていることが、上の動画の最後に紹介されています。

私が使っているのはこちらで買ったペーパーバック版ですが、大きいので持ち運び用にはオックスフォードのミニ辞書を使っています。

(右がOALD、左がミニ)

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それにしても、ホーンビーの辞書作りに傾けた情熱は、国語辞典編纂者の見坊豪紀を思い出させます。『三省堂国語辞典』の編纂者で、145万もの「生きた」言葉を用例カードとして集めた国語学者です。

三浦しおんの『舟を編む』に出てくる松本先生も思い出させます。

興味がありましたら、こちらもどうぞ。

books.bunshun.jp

 

窓辺の虹とテディーベア (ロックダウン中の子供たちの思い出)

コロナウイルス対策としての厳しいロックダウンがイギリスを覆った春先、ロンドンの住宅街の窓辺に見かけるようになったものがありました。

子供たちが描いた虹の絵です。

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これらの虹の絵はコロナウイルスの大流行に対して懸命の治療活動をするイギリスの国民医療サービス、NHSを応援しようとして始まったようです。

www.independent.co.uk

 

それは直ぐにロックダウンによって学校に行けず、家や近所を歩くことしかできなくなった子供たちに希望を与える活動に発展しました。

www.thesun.co.uk

 

虹の絵を描き、窓辺に飾ることで、子供たちがNHSを始めとする医療や生活を支える仕事に従事する人々を勇気づけることができ、子供たち自身も絵を描くこと、近所の家々に虹の絵を見つけることで、雨の後に見る虹のような希望を心に持つことができるようにという活動です。

3月上旬に始まった活動は瞬く間にイギリス全土とインターネット上に広がり、子供たちだけでなく、ロックダウン中の人々の心を温めました。

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4月5日に女王陛下が国民を力づけるために行った歴史的なスピーチの放送にもこれらの虹の絵が取り上げられました。

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家から飛び出したものも沢山見られました。

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さらには、黒人差別への抗議を示す"Black Lives Matter"と一緒になったもの。

(参考) "Black Lives Matter" とマイノリティの恐怖 - 倫敦月

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グレンフェルタワー火災における犠牲者を追悼する緑のハートと一緒になったものも。(参考) グレンフェル・タワーの今 (大火災から3年) - 倫敦月

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虹の絵ほど多くはありませんが、同じく窓辺に見かけるようになったのがテディーベアです。

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こちらはニュージーランドで始まった活動で、やはり学校に行けなくなった子供たちを楽しませるため、ぬいぐるみのテディーベアを窓辺に置いて見つけてもらおうという"Teddy Bear Hunt"「テディーベア・ハント」という活動です。

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中にはテディーベアではないキャラクターも…

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家の中だけではありません。公園の林の入口にこんな掲示が。

「テディーベアを見つけよう!」「そして、お話を作ってみよう。どうやってそこまで行ったのかな?何して遊んでいるのかな?」

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あっ、いました!

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コロナウイルスの大流行は子供たちにも暗い影を投げかけました。

今日(9月2日)から、多くの学校が再開されて子供たちが登校を始めましたが、これらの楽しい思い出も、ぜひ記憶しておいてほしいと思います。