人種差別抗議活動で標的にされる銅像とその過去
週末(6/6-7)のイギリス各地での抗議活動のニュースは日本でも注目して取り上げられているように見えます。
特にブリストルのエドワード・コルストンの像を引き倒した映像は象徴的で、ロンドンの6月8日月曜日のニュースでも繰り返し流れました。
さらには、国会前広場のチャーチル像には、その名前の下に続けてスプレーで落書きがされ、"CHURCHILL was a racist"(チャーチルは人種差別主義者だった)と。さすがにこれは非難され、直ぐに消されましたが。
こちら6月7日昼のチャーチル像。この像を目印に受付(?)を設けており、特に攻撃対象とは考えていない様子がわかります。
ロンドンの国会前広場にはチャーチルを含めて10体以上の像があるのですが、その一つ、ガンジー(Mahatma Gandhi)の像にも抗議のプラカードが括りつけられたと、インド系メディアが取り上げています。インド独立の英雄もアフリカでは人種差別抗議の対象になったことがあり、問題の複雑さを知らされます。
次に標的にされているとBBCが伝えているのが、オックスフォード大学にあるセシル・ローズ(Cecil Rhodes)の像。
19世紀後半のイギリス支配下の南アフリカにおける経営者、政治家です。ダイヤモンド流通のデ・ビアスの創業者といえば、その富がイメージできるでしょう。ザンビアとジンバブエは独立前はローデシアと呼ばれていましたが、このローズの名前に由来しています。ジンバブエが独立する1980年まで白人支配への抵抗が続いていましたから、つい40年前でしかありません。
巨大な富と権力を手にしたローズの遺産はオックスフォード大学に寄付され、これを元に運営されているローズ奨学制度があります。8000人以上の対象者の中には、アメリカのクリントン元大統領やハーバード大学のサンデル教授らの名前が見られます。
ケープタウン大学にあった像は既に撤去されましたが、オックスフォード大学はこれを拒否しており、火種が残っています。
アフリカを初めとして世界中に植民地支配の歴史があるイギリスでは、その関係者や機関も多数あります。
アメリカのジョージ・フロイド事件をきっかけに人種差別反対の大きな動きが始まったかに見えますが、過去を見直せという声の高まりとともに、民族間の反目の種にもなる恐れがあります。
ジョンソン首相は抗議活動への理解を示すとともに、平和的に(work peacefully, lawfully)と呼びかけていますが…
その首相本人も過去に人種差別的な発言があり、抗議対象にも上げられています。ガンジー像に付けられたカードのメッセージにも首相(Boris)がアメリカのトランプ大統領と並べて名指しされているのですから。
今回の抗議活動に対処する警察の動きや声明の慎重さを見ても、この動きへの対応が極めてデリケートであることを感じるのです。