ミート・アゲイン… ヴェラ・リンさん逝く
今日(6/18)、夕刊紙イブニング・スタンダードの一面を見て、驚きました。
"Farewell to our wartime sweet heart. We'll meet again singer Vella Lynn dies aged 103."
「我々の戦時の恋人にお別れを。『また会いましょう(We'll meet again)』の歌手、ヴェラ・リンさん逝く(103歳)」
(from Evening Standard, 18/06/2020)
イギリスに来るまでは、ヴェラ・リン(Dame Vera Lynn)さんも、"We'll meet again"も知らなかったのですが、最近よく耳にする曲と歌手でした。(※Dameはナイトに叙勲された女性への敬称)
最初に知ったのは4月5日の女王陛下がコロナウイルスによるロックダウンに耐える国民に向けた声明のとき。その締めくくりに用いられたフレーズが"We will meet again"でした。
"Better days will return. We will be with our friends again; we will be with our families again; we will meet again."
「よい日々は帰ってきます。私たちは友人と、家族とまた一緒になれるのです。私たちはまた会えるのです。」
そして、下記で触れたVEデーのBBC記念番組のエンディングもまたこの歌、"We'll meet again"。
これらで見聞きした映像、歌声の元について調べて、ヴェラ・リンさんを知ったのでした。
彼女は第二次世界大戦時に大きな人気を得たイギリスの歌手で、戦地の兵士たちに愛され、"The Forces' Sweetheart"(イギリス軍の恋人)と呼ばれました。その代表曲が"We'll meet again"『また会いましょう』です。
"We'll meet again, don't know where, don't know when. But I know we'll meet again some sunny day."
「私たち、また会いましょう。それが何処なのか、何時なのか、わからないけれど。でも、私にはわかるの。私たちはあるよく晴れた日に、必ずまた会えるのよ。」
この歌詞は、明日の命も知れない戦場で、どれだけ多くの兵士たちを慰め、癒したことでしょう。
その記憶は多くのイギリス人が共有しており、戦後も広く、長く愛されてきました。
そして、コロナウイルスでロックダウンに耐える国民、治療のための最前線で働く医療関係者たちに向けた女王のメッセージにも用いられたのです。もはや「イギリスの恋人」でしょう。
その家族のミート・アゲインを実感したのがこちら。(対コロナウイルスに従事して、9週間離れ離れだった看護師の母親と子供たちの再会)。
Susie is an ODP at the Queen Elizabeth Hospital in Kings Lynn. As she has been working in a Covid ward her daughters Bella (9 )and Hettie (7) went to live with their Auntie to keep them safe. They haven’t seen their mum for 9 weeks, until today. @Lottsoflove21 #ourprideofbritain pic.twitter.com/TZTwLNoEwL
— Pride of Britain (@PrideOfBritain) June 2, 2020
その第二次世界大戦時、この歌で英軍兵士たちを勇気づけ、今、またコロナウイルスで社会が逼塞したときに人々を慰めてくれた「イギリスの恋人」が、回復の兆しが見えてきたときに役目を果たしたとばかりにいってしまうとは…
先の歌詞は、大ヒットした大戦時からはるかな歳月を経て、この困難な時期に再び人々を励ますことを予期させていたのだと、そう思うのは、私だけではないでしょう。
ご冥福をお祈りします。
そして、困難に直面したとき、心の中でまたお会いしましょう。