倫敦月/アラビア月

英国ロンドンとUAEドバイでの生活と見聞きしたこと、訪れた場所などのことを…

ロンドンの長くて暗い夜

ここ半月ほど大忙しで、ブログを更新できずにいました。

 

その間にロンドンは2回目のロックダウンが予定通りに12月2日で解除されて、街にクリスマス前の華やいだ活気が戻ってきて、世界で初めてのコロナウイルスワクチンの接種が始まったという明るいニュースが笑顔で報じられたかと思えば、コロナウイルスの感染者数が驚くほど急に増えて、三段階の規制が中程度の Tier 2 から最も厳しいはずの Tier 3になったのもつかの間、追加されたさらに厳しい Tier 4へ。クリスマス直前に事実上の3回目のロックダウンに突入…

 

(コロナウイルスのワクチン接種開始を報じる新聞、Metro 09/12/2020, Evening Standard 08/12/2020)

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(感染者急増によるクリスマスの危機を報じて自制を呼びかける新聞、 Evening Standard 16/12/2020, Metro 17/12/2020)

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何とも激しいコロナの奔流に弄ばれています。

 

下の図はイギリスのコロナウイルス感染者数の推移です(棒は日毎の感染者判明数、曲線は7日間平均)。12月2日の規制緩和の後すぐに感染者が急増しています。

 

(コロナウイルス感染者数の推移、https://coronavirus.data.gov.uk/details/cases)

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このコロナウイルス感染者の急増がウイルスの変異種のせいなのか、ロックダウン解除を待ちわびていた人々がクリスマス前の街に一斉に繰り出したせいなのかは、まだわかりません。

 

(ロンドンの繁華街、12月6日)

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(相変わらず鉄道車両内でもマスクを着用しない人達)

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ただ確かなのは、人々の気持ちとしても、街の店やパブ、レストランにとっても、一年で最も嬉しい時期の一つであるはずのクリスマスが、ただ長くて暗い夜になろうとしているということです。

 

街の灯りが最も美しく映えるこの季節に…

(食料支援キャンペーンによるライトアップを報じる新聞、Evening Standard 18/12/2020)

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(追記) そのクリスマスの街の灯りを記事にしました。

pink-supermoon.hatenablog.com

 

今、遠くで何かがあったとしても…

これから書くのは、まあ、誰に向けたものでもない独り言ですね。

 

日本を離れて3年目。日本の出来事にますます関心がなくなってきて、それでもこうして日本語で文章を書いたり、仕事をしたりしているわけですが…

 

今日、日本である事件があって、ある人と連絡が取れなくなってしまいました。

日本にいたらもっと頻繁に会っていただろうし、こんな事態になったら色々な手段を使ってアクセスしていたでしょう。

インターネット、ソーシャルメディアで繋がっている気がしていても、何かあったらその関係がいとも簡単にぷっつりと切れてしまう。

友人、知人、親戚に何かあってもすぐに何かできないもどかしさ。

ネット、通信がすぐに使えるときだけに、かえってそのやるせなさを感じるとは…

 

などと、その人がきっかけで始めたこのブログのために撮った、春の月と一番星の写真を眺めながらぼんやりと考えました。

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コメントでもツイートでも、連絡をくれるといいのにな…

 

今日から12月。思うようにならなかった一年も残りわずかです。

クリスマスツリーの季節

11月下旬、ロンドンの広場、駐車場などのスペースに囲いができて、何かの準備が始まります。やがて、緑色のものが運び込まれて…

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そう、クリスマスツリー用のモミの木の販売が始まるのです。

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曇りがちなロンドンの空の下でも、活き活きとした緑の葉を広げるこのモミの木は Nordmann Fir ノルドマンモミという種類でツリー用として広く使われています。

Nordmann (ノルウェー人の)というのでノルウェーのものかと思いきや、コーカサス(黒海の東方、ロシア南西端、アゼルバイジャン、ジョージアの地域)が原産で、コーカサスモミとも呼ばれます。Nordmann というのは人名に由来するとのこと。

Abies nordmanniana - Wikipedia

 

35ポンド(約5000円)からと、なかなかのお値段ですね。

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ロンドンに31か所もこのような野外店舗を展開しているのは Pines and Needles という会社で、スコットランドで育てたモミの木を運んできます。

www.pinesandneedles.com

 

なので、スコットランドの民族衣装、タータンチェックのキルトを身に付けた人も。

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この銀色の筒は何に使うのか?

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モミの木をネットでくるんで持ちやすくするための道具です。

しかし、持って帰るのはちょっと大変…

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いよいよ12月になり、これらのモミの木が家々を飾り、クリスマスがやってきます。

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ロンドンでも栗ご飯

10月後半にもなるとロンドンのスーパーでも栗が売られるようになります。

栗は英語でマロン?

残念、それはフランス語 (marron, 大粒の栗)。

英語ではチェスナット (chestnut)ですが、フランス語のマロンを語源に持つ 'maroon' = "a dark red-brown colour"「暗い赤茶色」という単語もありますね。「栗色」というべきでしょうか。

 

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このイギリスのスーパーで売られている栗は日本のものに比べると二割程度小粒です。まあ、値段も一ネットで3ポンド(約420円)程度と安いのですが。

私は子供のころよく食べた栗が好きなので、イギリスに来てこれを見つけたときは、嬉しくなってすぐに買ってみました。でも、茹でると水っぽく甘みが少なくて、食べられはしますが、美味しいとまではいえません。

オーブンで焼くと甘みが強くなってよいらしいのですが、焼き加減がわからなくて躊躇したので、栗ご飯にしました。 

 

難関は皮むきです。特に今年は屋台で安売りしているのをたくさん買ってしまったので。

(チェスナット一箱3ポンド)

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小粒なのが泣けます。概算で200個以上はあろうという栗をひたすら剥き続けました。

ラジオペンチで外側の鬼皮をむしり取り、ピーラーで渋皮を剥きます。食べる「実」の部分は日本の栗より硬めで、ピンセットで渋皮をパリパリ剥がせるものもありますが、ダメならすぐにピーラーで削り取ります。渋皮が実の深い皴の中に食い込んでいるものは容赦なく割って削り取り!

時間をかけて剥き終わった成果の一部はこんな感じ。

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ここまで来れば、あとは普通の栗ご飯のレシピで炊いてOK。

懐かしい日本的な秋の味覚を楽しめます。

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このように季節を味わうことはできますが、労力も大変なものなので一シーズンに一回でいいやと思っていたら、屋台にいつもよりも大きめの栗が出ているのを見つけてしまいました。

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屋台の奥にある箱の表示を見ると中国産です。

ということは、日本の栗に近いのではないかと思ってまた買ってしまいました。少々カビもあるので躊躇しましたが(黒くなっているのは避けましょう)。

 

茹でてみると、ホクホクと甘い、子供のころから親しんできた味です。

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というわけで、ロンドンで日本と同じような栗を手に入れたかったら、11月中旬まで待ってみるとよいかもしれません。

かもしれないというのは、このイーリング・ブロードウェー (Ealing Broadway) のショッピングセンター前に出ている屋台は、果物の多くが一箱2ポンドとお買い得なのですが、同じものが安定して入荷するお店ではありません。

来年、同じのがまた入るとは限らないので、今だけのチャンスかも… さあ、急げ!

(イーリング・ブロードウェーの果物屋台、平日・土曜日営業でお買い得)

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イギリスのカフェチェーンのポスターに見る競争戦略(?)

イギリスのカフェチェーン、Pret A Mnager(プレタマンジェ, 通称Pret)のドリンク類サブスクリプション(定額制)を利用し始めて、2か月余り。月20ポンド(約2800円)で、毎日本格的な淹れたてコーヒーが飲めるとあって、せっせと通うようになりました。

pink-supermoon.hatenablog.com

 

(Pretのサブスクリプションのポスター、何回でも何回でもあなたに会えてうれしい…)

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コーヒー、紅茶、コールドドリンク等が一日5回まで利用できます。コーヒーは淹れたての本格的なもので、エスプレッソ、カプチーノ、ラテ、フラットホワイト、モカ、マキアート、アメリカーノといろいろ試してみました。もちろん、スムージーやフラッペも。

おかげで、インスタントコーヒーが飲めなくなってしまうという深刻な副作用が(笑)

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このニュースによるとこのサブスクリプションの利用者は初日で16,500人に上ったそうです。

Pret A Manger sees 16,500 coffee subscriptions on first day

オフィスに行ったや自宅付近ではもちろん、休日に出かけたときもグーグルマップでPretを探して利用しているので、他のカフェチェーンを使うことがなくなりました。

 

当然、他のカフェチェーンの利用者が減っているようで、対抗策を打ち出してきたのはイギリスで2000店以上と最多の店舗数を誇るCosta (コスタ)。

各種コーヒーのミニサイズを新たに設けて安さをアピール。

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しかし、ここはLサイズでもレギュラーとの値段の違いが少なくて、いつも大きいのを頼んでいた記憶が。その後、このミニサイズのポスターを見かけなくなったのはあまり上手くいかなかったのかも。

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それに、安さはこちらの十八番。日本でもファストフード価格破壊を仕掛けた記憶のあるMcDonald's(マクドナルド)。

他の多くのチェーン店では2.5ポンド以上するコーヒーが99ペンス(約140円)というのは、100円コーヒーのイメージそのもの。

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カフェチェーンというよりバーガーのファストフード店なので、当然のようにバーガー類もお値打ち価格を打ち出してきました。McDonald'sは、よくフリーペーパーのMetroに1.99ポンドのセットメニューのクーポン券を付けていましたが、今回も価格で勝負。

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カフェチェーンに戻って、Costaに次ぐ店舗数のStarbucks (スターバックス)は我関せずと、季節限定フレーバー等をいつものように表示。

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イギリスのカフェチェーン第三位の Caffe Nero (カフェネロ)も、本格的イタリアンコーヒーとペストリーで、ヨーロッパ感を前面に出したいつもの路線。サンドイッチを主力とする Pret との違いをアピールすることにもなります。

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さて、このカフェチェーンのアピール合戦、次はどうなるのかと思って見ていたら…

一斉にクリスマスになりました。お揃いでクリームを載せて。

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ただし、McDonald'sだけはクリスマスバージョンもデフレ作戦です。これも我が道(笑)

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『フランダースの野に』ポピーは育つとしても (リメンブランス・ポピーの由来)

戦没者を追悼する赤いポピー(ヒナゲシ)の花が11月上旬のイギリス中で見られることについて先日の記事に書きました。

pink-supermoon.hatenablog.com

 

この赤いポピー、リメンブランス・ポピー(remembrance poppy)が始まったいきさつをイギリスの在郷軍人会(The Royal British Legion)のウェブページから引いてみます。

www.britishlegion.org.uk

ここではポピーは、過去の戦争の犠牲者の追悼と平和な世界への希望のシンボルであると同時に、現役・退役軍人とその家族のコミュニティーへの支援を表すものとしています。

 

ポピーが使われるようになったきっかけは、第一次世界大戦で、当時イギリスの自治領だったカナダから軍医として従軍したジョン・マクレー(John McCrae)の詩『フランダースの野に (In Flanders Fields )』にあります。

マクレーは1915年5月、ベルギーの激戦地イープルで友人を失った直後にこの詩を作りました。荒れはてた戦場に咲く赤いポピーの印象がこの詩に反映されています。 

 

(Imperial War Museumの映像、第一次世界大戦の戦場のイメージ)

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(同、戦場に咲くポピーのイメージ)

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 マクレーの詩『フランダースの野に』はイギリスの雑誌Punchに投稿・掲載され、人気となりました。そして、これを戦死者の家族や戦傷者への支援のシンボルに使うことがアメリカから始まりイギリス、イギリス連邦の国々に広がって現在まで続いています。

 

『フランダースの野に』は15行の平易な表現の短文の中に、印象的なイメージを織り込んだもので、広く理解され人気になった理由がわかる気がします。

ネット上にもこの詩に強い印象を受けて和訳して紹介するものが多数あります。

私も訳してみました。できるだけ原文に近い形で、平易な表現を心掛けて。

 

In Flanders Fields

  フランダースの野に

 

In Flanders fields the poppies blow

  フランダースの野に、ポピーが風に吹かれる

Between the crosses, row on row,

  幾重もの列をなす十字架の間で

That mark our place; and in the sky

  その墓標は私たちの居場所を示している、そして空には

The larks, still bravely singing, fly

  ひばりたちが飛ぶ、今も勇ましげにさえずりながら

Scarce heard amid the guns below.

  地上では砲声でほとんど聞こえないが

 

We are the Dead. Short days ago

  私たちは死者だ、ほんの数日前には

We lived, felt dawn, saw sunset glow,

  私たちは生きていた、夜明けを感じた、夕日の輝きを見た

Loved and were loved, and now we lie

  愛し愛されていた、そして、今は横たわっている

In Flanders fields.

  フランダースの野に

 

Take up our quarrel with the foe:

  私たちの敵との争いを引き継いでくれ

To you from failing hands we throw
  成し遂げられなかった私たちの手から君たちに投げ渡す

The torch; be yours to hold it high.

  その松明は君たちのものだ、高く掲げるための

If ye break faith with us who die

  君たちが死んだ私たちを裏切るのならば

We shall not sleep, though poppies grow

  私たちは眠らないであろう、たとえポピーは育つとしても

In Flanders fields.

  フランダースの野に

 

Lieutenant-Colonel John McCrae
~ May 3, 1915

  中佐 ジョン・マクレー、1915年5月3日

 

他の訳の中には私の解釈と異なるものもあるので、私の考えも記しておきます。

  • row: 動詞「漕ぐ」ではなく名詞「列」とし、その列をなすのは野生のポピーではなく人工的に並べられる十字架としました。
  • that mark: that は関係代名詞で crosses (複数)を指し、mark 「(位置などを)示す」の主語としました。
  • gun: この語は火薬で弾丸を打ち出す兵器全般に用いられるので、「銃」ではなく「砲」としました。より音が大きく、塹壕戦における主力武器であり、この詩作のきっかけであるマクレーの友人を戦死させたものなので。
  • below: 「私たちが砲声の下」にいるのではなく「砲声がひばりの下」にあるものとしました。
  • heard: 前後がいずれも現在形なので、hear「聞く」の過去形ではなく、過去分詞と解して、ひばりの鳴き声が聞こえないものとしました。scarce は 古い用法で副詞 scarcely 「ほとんど~ない」の意。

 

考えたのは10行目の "Take up our quarrel"。'take up' は Oxford Advanced Learners Dictinary では最初の意味とし​て "to continue, especially starting after somebody/something else has finished" 「続ける、特に他の誰か/何かが終えた後に」が挙げられています。

これに対して小沼通二さんは15-16世紀の古い用法として「友好的に収める」という意味も二重に込められていると解釈しました。

今月のことばNo.9 | 世界平和アピール七人委員会

でも、ほとんどの辞書に記載されていない古い意味を見出そうというのは、読み手の願望を込め過ぎている気がします。

 

気になるのは 13行目の 'ye'。これは15世紀以前の中英語で用いられていた主格の二人称複数の代名詞で、現代では'you'「あなた方は」。とすると、やはりシェイクスピア時代を意味するのか…

実は'ye'は方言としてカナダの東海岸部、イングランド北部、アイルランド等で地方的に用いられているそうです。マクレー中佐はスコットランド系でカナダ・オンタリオ州出身ですが、戦死した友人(ケベック州出身)や他の戦友が 'ye' を使う人であったのかもしれません。 

 

というわけで、この詩が広まった当時の一般的なイメージと同じく、戦いを続けることを訴えた内容と解釈しました。

Wikipediaでこの詩を説明するページにはマクレー本人の手書きの詩が載っています。12行目を"The torch; be yours to hold it high!"と感嘆符を付けて力強く表現しており、これを見ても友好的に収めるイメージではないと思います。

In Flanders Fields - Wikipedia

 

その思いが残っているのでしょうか…

第一次世界大戦以降も延々と世界各地での戦争・紛争に関わり続けるこのイギリスで、赤いポピーを使った軍に対する支援活動もずっと続いているのです。

 

(リメンブランス・サンデーに追悼式典が行われたロンドンのセノタフに並んだポピー, 11月13日撮影)

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この先もずっと続けなければいけないのでしょうかね…

上の訳では、争いについて自分達は失敗し、後の人々にそれを引き継ぐということに重点を置き、戦えという表現は用いませんでした。敵を倒すことのみを成功とするのか、別の道があるのかも含めて次の人々に託すというイメージで。

小沼訳の影響とも言えますが、十字架やポピーのリースを増やし続けることが野に眠る者たちの願いだとは限らないと、そんな思いで訳を考えてみたのです。

 

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(補足)

この詩はロンドー(rondeau)という形式のもので、5行・4行・6行の合計15行の中に2種類の文末の押韻と、2回の同じ行の繰り返し(リフレイン)を配しています。押韻A, BとリフレインCが、AABBA, AABC, AABBACの順に並ぶ形式で、ここでも(A)[əʊ]と(B)[aɪ]、リフレインの(C)"In Flanders fields"が整然と並んでいます。

(A) blow、(A) row、(B) sky、(B) fly、(A) below

(A) ago、(A) glow、(B) lie、(C) In Flanders fields

(A) foe、(A) throw、(B) high、(B) die、(A) grow、(C) In Flanders fields

この明解なリズムと押韻も広く人気を呼んだ理由かもしれません。

遠くから聞こえるガイ・フォークス・ナイトの花火

今夜(11/14)のロンドンは雨です。

遠くからパパパ・パパン・パンという音が聞こえて来ました。こんな雨の中でも花火を打ち上げているのだなと思い、フラットのベランダに出て見ると遥か遠くで2か所ほど花火を打ち上げているのが小さく見えました。

いつものコンパクトカメラの最大ズームで撮影してみますが、さすがにブレブレで上手くは映りません。

 

あきらめて部屋に戻っていると、今度は割と近くでヒュー・パパ・ドン・パパンとまた花火の音が聞こえます。でも、ベランダに出たときにはもう止んでいます。

どうやら、近所のどこかで個人が打ち上げたようです。こんなのが時々聞こえるので、ベランダで待ち構えて捕まえました。

やはり、花火大会の大玉ではなく小規模のものです。それなりに綺麗ではありますが、もっと大きいのも見たかったなと、以前のことを思い出しました。

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イギリスで花火のシーズンと言えば11月上旬です。10月中旬まで夏時間のために暗くなるのが遅いのもありますが、もっと大きい理由は11月5日のガイ・フォークス・ナイト (Guy Fawkes Night)。

1605年のこの日に計画されたイングランド国王暗殺・議会爆破が未然に露見して、犯人の一人として処刑されたのがガイ・フォークスという人物。

この事件を元に11月5日がイングランドの平穏を祝う記念の日になり、その夜に花火を行うようになっていきました。なので、花火大会がよく行われるのは、その11月5日かその前後の週末…

 

なのですが、今年はコロナウイルス対策のため地元ロンドン・イーリング区付近の花火大会はいずれも中止になってしまいました。

だから、先週も今週も花火大会といえば音に聞くか、ベランダからはるか遠くに眺めるのみというのが今の状況です。

 

昨年・一昨年はイーリング・ブロードウェー駅から少し北にあるクリケットクラブで行われた花火大会を見に行きました。手元の写真の日付を見ると、それぞれ11月3日と5日のいずれも土曜日。

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日本の花火大会というと海岸や河川敷で行われ、屋台が並びというのが一般的ですが、この花火大会はクリケットクラブのグラウンドに入場料を払って入り、飲食と音楽と共に花火を楽しむというスタイルです。子供向け遊具などもあってファミリーでもOK。

クイーン等のお馴染みのブリティッシュ・ロックがかかり、レーザーの光が飛び交う中、カップのビールを飲みながら間近で打ち上げられる花火を見上げるというイベント。

…のはずです(笑)

 

花火は上空に上がりますから、グラウンドに入らなくても見えるわけで、近くの道端で立ち見する大勢の人の中に混じり、直ぐ近くに上がる花火を見上げていました。

なので、こんな風に花火の一番下は塀で切れるという…

それでもクライマックスとしてエルガーの威風堂々が流れる中で打ちあがる大きな花火まで飽かずに楽しむことができました。

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今年はそんな近隣の花火大会が中止になって物足りない人が沢山いたのかもしれません。スーパーの花火売り場が早々と売り切れていましたから。

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そして、遠くに見える花火大会に混ぜて裏庭(?)の花火を楽しんだということなのでしょう。

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