スタージェンムーン=チョウザメ月 (英語の満月の呼び方)
このブログのIDの'Pink-Supermoon'は、今年4月8日にロンドンで見上げた満月が、通常より大きく見えるスーパームーンであり、4月の満月を英語で'Pink moon'と呼ぶことに由来しています。
今日、8月3日の夜はそれから4か月後の満月です。もし、今ブログ開設を思い立っていたら、8月の満月を示す名前にしたのか…
というわけで、英語の満月の呼び方を和訳と共に並べてみます。(括弧内は別名)
- 1月 Wolf moon ウルフムーン 狼月
- 2月 Snow moon スノームーン 雪月 (Storm moon 嵐月, Hunger moon 空腹月)
- 3月 Worm moon ワームムーン 芋虫月 (Milk moon 乳月)
- 4月 Pink moon ピンクムーン 桃色月 (Egg moon 卵月、Fish moon 魚月)
- 5月 Flower moon フラワームーン 花月 (Hare moon 兎月、Corn planting moon 玉蜀黍植月、Milk moon 乳月)
- 6月 Strawberry moon ストロベリームーン 苺月 (Honey moon 蜜月、Rose moon 薔薇月、Mead moon 蜜酒月)
- 7月 Buck moon バックムーン 牡鹿月 (Thunder moon 雷月)
- 8月 Sturgeon moon スタージェンムーン 蝶鮫月 (Grain moon 穀物月)
- 9月 Full corn moon フルコーンムーン 玉蜀黍実月 (Harvest moon 収穫月)
- 10月 Hunter's moon ハンターズムーン 狩人月 (Harvest moon 収穫月)
- 11月 Beaver moon ビーバームーン 海狸月 (Frost moon 霜月)
- 12月 Cold moon コールドムーン 寒月 (Long night moon 夜長月、Oak moon 楢月)
※引用元 BBC
What is a Buck moon and why does the Moon have different names? - CBBC Newsround
元々はアメリカ先住民(Native American)の呼び方ですから、北米の四季や生活に根差した名づけになっています。別の場所での名前も挙げているのでハーベストムーン等は複数月に登場したりしています。
和訳は無理やり短い漢字表現にしました。蝶鮫はチョウザメ、玉蜀黍はトウモロコシ、海狸はビーバー(!)です。ミード(Mead)は蜂蜜から造る酒です。
3月の芋虫月は二十四節気の「啓蟄」を連想します。
日本の5月の「皐月」は「早苗月」(さなえづき)、つまり田植えの月だし、9月の「文月」は「稲含月」(ほふみづき)、 稲の穂が実る月で、トウモロコシ関係の命名と同じ発想。
日本の4月の「卯月」は卯の花(ウツギ)の白い花、英語の'Pink moon'はフロックス(phlox、クサキョウチクトウ)の薄紫の花。
11月の別名も日本と同じ「霜月」で、ところ変われど同じ発想で月を感じていたのですね。
で、最初に戻ると、もし、私が8月にブログを作ろうと思っても、馴染みのない「チョウザメ月」は選ばなかったでしょう (笑)
残念ながら、今日の満月は薄曇りでしたし。
なお、2019年1月21日未明、イギリスでは月食を見ることができ、'Super blood wolf moon'等と呼ばれていました。Blood「血」と呼ばれるのは月食の間、月が赤く見えるためです。
明け方にこの赤い月を見ながら、WolfとBloodの組み合わせが寒々とした冬空に似つかわしいと感じたのを覚えています。
次の皆既月食は2021年5月26日で、これもスーパームーンに当たっています。
残念ながらイギリスでは見られませんが、日本では見ることができるので「スーパー・ブラッド・フラワー・ムーン」と話題になるのではないでしょうか。
イギリスの電圧は大体230V (電気製品の事前購入)
今回はロンドン駐在が決まって引っ越すときの準備品の中から、電気製品について前回(下記の記事)よりも詳しく書きます。
その前回記事ではイギリスの電圧は240Vと書きました。『地球の歩き方 イギリス 2017~2018年版』にそう書いてあるし、前任の駐在員からもそう聞いていたのですが…
以前は240Vだったのですが、2003年1月31日以降、イギリスの電圧は公式には230Vです。
The Electricity Safety, Quality and Continuity Regulations 2002
このRegulation 27に示されているのは230Vで許容範囲が+10%からー6%、つまり216.2Vから253Vです。
元々、イギリスは240Vで、ドイツ・フランス等の大陸のヨーロッパ諸国は220Vでした。EU内でこれを統一しようとして決められたのが230V(+10%, -6%)で、これにより240Vでも220Vでも、すでにあるインフラの電圧を変えなくても共通の決まりに従うことになるのです。賢いというか、理念的というか、お役所的というか…
だから、イギリスの電圧は公称230V、実質240V、なので「大体230V」ということに。
試しにフラットの電圧を測ってみると、確かに240Vでした。
イギリスで買った電気製品を見ると、どれも220-240Vと書かれています。
なるほど、実は日本でヨーロッパ用の炊飯器を買おうと調べていたとき、無印良品の炊飯器の説明書に230Vと記載されていた理由がわかりました。正しい表記だけど、当時は240Vではないのが少し不安で手を出しませんでした。220-240Vと書いていてあったら迷わなかったのに…
では、引っ越し前に準備して実際に活用している電気製品です。実際にどれもアマゾンで買いました。
●電源変換プラグ(BFタイプ、ヨーロッパではGタイプと呼ぶ)。
しっかりした作りで、2個セットで割安でした。日本のプラグだけではなく、ヨーロッパの大陸側で使われているSEタイプ・Cタイプも差し込めるので、イギリス以外のヨーロッパ向け電気製品のための変換プラグとしても使えます。
スマホ等はあちこちの部屋で充電することが多いので、多めに準備しておくとよいと思います。
イギリスから他のヨーロッパ各国に出張や旅行で出かけることも多いでしょうから、そちらで使うSEタイプの変換プラグも準備しておきましょう。イギリスではサイズの大きいものしか手に入りません。こちらも2個セットで割安です。
●小型変圧器 (トランス)
日本用の小電力の電気製品を使う場合に備えて買いました。
最大120Wなので炊飯器等の大電力用には間違っても使いませんよう。電気カミソリ、PCやスマホの充電器、半田ごて(30W)に使っています。出力電圧を実測するときちんと100Vでした。
取り出しが1口なので、日本から持ってきた3口のタップを併用しています。入力は220~240Vなので220Vのヨーロッパ各国でも使用できます。そのため、差し込みプラグがCタイプで上記の変換プラグと併用になるのが少し残念。
大は小を兼ねるということで、炊飯器等にも使える1500W等の大出力の変圧器を買っておく手もあります。ただし、電源を入れている間、ブーンという低い音が出たり発熱があったりするし、値段も高いので、小電力用にしか使わない場合はやや難ありです。
●炊飯器
日立の海外向けの炊飯器を購入しました。タイ製で説明書は英語でした。日本米だけでなく、細長い海外米にも対応しているので、ロンドンで入手しやすいバスマティ・ライスやジャスミン・ライスも炊きやすいです。その代わり、日本米を炊くときは水加減を調節する必要もあるのですが。
しかし、1万円程だったのがずいぶんと値上がり… 恐らく製造中止したのだと思います。今買うなら、後継と思われるこちらでしょう。
これらはIH式ではなくマイコン式と呼ばれるタイプです。電源は220-240Vと明示されており、やはりSEタイプのプラグが付いており、最初の変換プラグと併用します。
海外用のIH式炊飯器では220~230Vと記載されている製品しか見つかりません。上記の通り、公称230Vのイギリスで使えるはずですが、説明書は未確認です。
ご飯の味はマイコン式とIH式の違いよりも、現地で入手するお米の質の影響の方が大きいと思います。
最後にイギリスでは日本の100Vよりも電圧が高く、電圧がかかった変換プラグに日本式のプラグを差し込むとパチッと火花が飛びます。
イギリスのソケットにはスイッチが付いていますので、プラグを差し込んでからスイッチをオンにするのが正解です。下の写真の右側はスイッチオン状態なので真似しないでください(笑)
ホリデーメーカー達の憂鬱 (海外旅行計画はギャンブル)
夏のホリデーシーズン到来!
コロナウイルスで逼塞していたイギリス人たちもパブで楽しむだけではなく、例年の通り南欧などで過ごそうと、急遽、旅行に出かける人も沢山出ています。
イタリア、スペイン、ギリシア等の南欧各国は、夏場の観光収入が大きいので、コロナウイルス対策の入国規制も早々と解除して「いらっしゃい」と意欲満々でした。
イギリス政府も海外からの入国者に14日間の自主隔離を義務付ける規制を、特定の国に対して解除する' travel corridors'「旅行通路」を7月6日から始めました(イングランド限定)。コロナウイルス感染者が少なくなった国が対象で、ポルトガル、ノルウェーを除くヨーロッパの主要な国々が入っています(日本も)。
さっそく、予約して続々と出かけ始めたのですが…
やはりというか心配した通りというか、スペインやフランス等でコロナウイルス感染者が増加しています。特にスペインのバルセロナのあるカタルーニャ地方がホットスポットになってしまいました。
これにイギリス政府が素早く、しかも、突然対応しました。
7月25日土曜日の夕方、突如としてスペインからの入国者に14日間の自主隔離を、26日午前零時から再適用することを発表したのです。実施のほんの数時間前。違反者は1000ポンドの罰金です。
この決定・実施の素早さはさすがなのですが、スペインで週末を楽しんでいたホリデーメーカー(holidaymaker, イギリス英語で休暇で旅行する人, アメリカ英語ではvacationer)達はびっくりして怒り出しました。
人気のリゾート地であるマヨルカ島やカナリア諸島等ではコロナウイルスの流行は抑えられているのに、スペイン全土を対象としたことにも。
翌朝のニュースは怒り心頭の旅行者のインタビューや、旅行会社の当惑、保険は効くのか等の話題でもちきりでした。
間の悪いことに、イギリスのシャップス運輸相(Grant Shapps, MP, Secretary of State for Transport)は25日に家族と休暇でスペインに出たところでした。
リベラル寄りのThe Guardian紙が、こんな想像をしてみようと、こき下ろします。
"Shapps feels the pain in Spain on holiday from hell"「シャップスはスペインで地獄の休日の苦痛を味わっている」の見出しで。
("the pain in Spain"はミュージカル『マイ・フェア・レディ』の劇中曲"The rain in Spain "のもじり)
(奥様から)「あなたは運輸大臣だと思っていたけれど、このことを知ってたの?」
「保健相のハンコックが時間を間違えてゴメンっていってきたよ。でも、事前に知ってキャンセルしてたらインサイダーになっちゃうだろ?」
「何でコロナにかかる恐れのあるところに連れてきたのよ?」
「イギリスよりスペインの大部分の方が感染率が低いからむしろ安全だよ。」
「でも、スペイン全土を隔離対象にすることはなかったんじゃない?」
「それは思いつかなかったな。ゴーヴ(大臣)がスペイン全土にすべきだっていったんだよ。イビサ島(スペイン領)で休日を過ごした後、さらに2週間休みたいらしいんだ。」
この調子で続きます。もう、ブリティッシュ・ユーモアって…
実際には翌日のビデオ会議で航空会社にイギリス人帰国への協力をお願いする、職務に忠実なシャップス大臣…
Following the unexpectedly rapid rise in Spain's #coronavirus cases, I held a video call with UK airlines + our Ambassador @HughElliottUK today in order to ensure close coordination to help UK nationals return from Spain. We will all need to quarantine for 14 days on arrival.
— Rt Hon Grant Shapps MP (@grantshapps) 2020年7月26日
フランス、ベルギー、ドイツ等でもコロナウイルス感染が増加しつつあります。
大人しく国内にとどまるか、自主隔離対象にならない方に賭けるか、自主隔離でも仕方ないと腹をくくるか。いずれにしても、今年の夏は悩ましい選択を迫られています。
悩ましいどころか、深刻なのが運輸・旅行業界。ようやくの旅行再開で息を吹き返したかというところに、一番の稼ぎ時を台無しにするこのショックです。当然、政府の対応を非難しています。
イギリス最大手の旅行会社トゥイ(Tui)はスペイン旅行をキャンセルにした上で、イギリスとアイルランドで166店の閉店、最大900人の削減を発表しました。
未だに営業再開できない旅行会社もあります。
実は、私もこのギャンブルを考えたのです…
元々は4月のイースター休暇の旅行予定があったのですが、ドイツのロックダウンで中止。予約していたブリティッシュ・エアウェイズ( BA, British Airways)のフランクフルト便は運休になったので、オンラインの申請で次回に使えるというバウチャー(Future Travel Voucher)に変えてありました。
これを利用しようと旅行を計画してたところ、オンライン予約ではバウチャーを使えないことが発覚。バウチャーの利用は電話予約でしかできず、その電話が全然つながらない!
結局、朝の受付開始時刻を少しフライングして電話をかけて、何とかつながって予約できました。その際、バウチャーの番号の他に、元の予約番号、こちらの名前、バウチャー取得時のメールアドレス、住所、前回予約時のクレジットカード番号と、次々と質問されて大変でした。
前回のフライトとの差額は放棄せざるを得ませんでしたが、予約は再変更できるとのこと。しかし…
そこへ、このスペインの自主隔離再開の事態です。行き先はスペインではありませんでしたが影響があったのか、往路便が突如キャンセルに。
またしても電話が必要になって、またしてもつながらない!
結局、またしても朝一番に電話して、30分以上待ってやっとつながり、今度は返金させました。
これがコロナ共存でのニューノーマルだとすれば、旅行計画にはギャンブルがつきものになってしまいます。やれやれ…
フェイスカバー、もといフェイスカバーリング? (Face Covering)
前回の記事でコロナウイルス対策のため、イングランドで買い物、公共交通機関での「フェイスカバー」が義務化されたと書きました。
正確には政府の通達には'face coverings'、つまり「フェイスカバーリング」と書かれています。
(イギリス政府の通達)
(この記事では「フェースカバー」と表記しました)
Oxford English Dictionaryで'covering'を引くと、名詞として"a layer of something that covers something else" 「別のものを覆う平面状のもの」とされています。
なので、'face covering'はコロナウイルス感染防止のために鼻、口を覆うマスクなどの「もの」を指すわけです。'meeting'「会議」や'painting'「絵画」のような動名詞の普通名詞化でしょう。
一応、イギリスの英語でも'a face cover'などとingのない「フェイスカバー」の表現がないことはありません。ニュースでも使われていますし、ジョンソン首相やハンコック保健相らの発言にもあります。
Googleで"face cover"を画像検索すると、ちゃんとマスクが出てきます。例えば、
でも、お店の注意書きは'face covering'の完勝でしたし、政府の広報、ニュースやネット上の表現もほぼ全てが'face covering'です。
名詞の'cover'の意味を引いてみると、"a thing that is put over or on another thing, usually to protect it or to decorate it"「通常、保護や装飾のために、ものの上に載せたり、付けたりするもの」とありますので、蓋のように上からすっぽり被せるもののイメージがあるかもしれません。
これをカタカナの日本語にする場合、「カバー」には本、車、スマホ、パスポート等を保護するカバー類があってイメージしやすい一方、「カバーリング」はそこまで一般的に使われている語とは思えません。なので、前の記事では「フェイスカバー」と書きました。
これを、いろいろな表記でググってみると、「フェイスカバー」がダントツです。
- "フェイスカバー" 約3,390,000件
- "フェイスカバーリング" 210,000件
- "フェイスカバリング" 約3,000件
- "フェイスカヴァー" 160件
- "フェイスカヴァーリング" 4件
- "フェイスカヴァリング" 3件
- "フェースカバー" 約181,000件
- "フェースカバーリング" 4件
- "フェースカバリング" 約11,200件
- "フェースカヴァー" 1件
- "フェースカヴァリング" なし
- "フェースカヴァーリング" なし
「フェイスカバー」はマスクだけではなく、顔全面を覆うものや、日焼け防止用の商品として以前からあるので、件数が多く、イメージも容易だと思います。
さて、 この'face coverling'は5月にOxford Learner's Dictionaryに追加されたコロナウイルス関係の新語には入っていません。
英語圏において、フェイスカバーの着用が最近になって急に広がったことが実感できます。
なお、ingを巡る議論は、やはりコロナウイルス関係で使われるようになった'social distancing'にも当てはまります。
訳語の「社会的距離」を使わず、カタカナ語にするときに「ソーシャルディスタンス」とするか「ソーシャルディスタンシング」とするか。
後者は長すぎて落ち着きが悪いと感じたので、このブログでは「ソーシャルディスタンスを取る」といった表現を主に使っています。「距離を取る」だけで十分な箇所も多いかもしれません…
お買い物でもフェイスカバー (イギリスのマスク着用義務拡大)
コロナウイルス対策として、今日(7/24)からイングランドでは買い物の際は店内でマスク等のフェイスカバー着用が義務付けられました。違反者は100ポンドの罰金です。
バス、地下鉄等の公共交通機関では6月15日から着用が必要でしたが、それが買い物等に拡大されたということです。
規則はこちらで通知されています。
着用が必要な場所は、"enclosed public spaces – including shops, supermarkets, shopping centres and transport hubs"「屋内の公共の場所 - 店舗、スーパーマーケット、ショッピングセンター、公共交通施設」です。
今日出かけたときにショッピングセンターの店舗やバス等を見てみると、皆フェイスカバーをしていましたし、スーパーマーケットの前で「マスクがない」からとグループの一部が入店しなかったのを見かけました。
(ショッピングセンターにて)
着用が必要なのは'face coverings'なのですが、ここでは「フェイスカバー」としています。
その説明は、"for example, a fabric covering, scarf or bandana – that covers the nose and mouth"「例として、布のカバー、スカーフやバンダナで、鼻と口を覆うもの」としています。だから、マスクには限定されないのですが、やはり日本のニュースでは「マスク」と書いているものがあります。
驚いたことに、上のリンクの政府の通知には'mask'「マスク」の語が使われていません。
辞書の第一の意味は、'mask' = "something that you wear over your face to hide it, or to frighten or entertain other people" 「隠すため、または人を怖がらせたり楽しませたりするために顔の上に着けるもの」ですから、これですね。
あるいはこちら (笑)
日本でお馴染みのマスクは'surgical (face) mask'「手術用マスク」、あるいは'medical (face) mask'「医療用マスク」でした。
さすがに、コロナウイルス流行後は'Face Mask'だけでこれを指すことが普通になっていますが。
街で見てみると、半分以上は不織布のマスクを使っているようです。多くは水色で、黒もかなりいますが、白はほとんど見かけません。たまに白がいたと思うと日本人っぽかったり。
布製のマスクでは黒が多い印象ですが、派手な色や柄の入ったマスクを着けた女性もよく見ます。
日本政府が採用したという白くて小さいガーゼマスクは見ませんね…
なお、こちらは最近のイギリスのニュースを騒がせているジョニー・デップ、アンバー・ハード元夫妻の法廷闘争( The Sunを名誉棄損で訴え)。黒のバンダナと赤いスカーフと洒落ています。
このフェースカバー着用は、11歳未満の子供や健康上の制約でマスクが付けられない人は免除されます。
また、下記の場所は除外されています。
- eat-in restaurants and pubs (店内で食事ができるレストラン、パブ)
- hairdressers and other treatment salons (理容店、美容サロン)
- gyms and leisure centres (ジム、レジャーセンター)
- cinemas, concert halls and theatres (映画館、コンサートホール、劇場)
ここで、飲食店でテイクアウトができる場合はどうするのということになって、昨日まで政府内でも決まっておらずに混乱していましたが、テイクアウトの場合はフェースカバーが必要ということに落ち着きました。
テイクアウトとイートインの両方ができるところも多いので現場は困っているようですが…
と思っていたら、今日の夕刊、Evening Standard紙はチェーン店のカフェの一部店舗では、テイクアウトでもフェイスカバーなしを認めていたと報じていました。
Ealing BroadwayのCaffe NeroとPret A Mangeではイートインとテイクアウトを別の列にしていたということですが、テイクアウトでもフェイスカバーをしない人が結構いた模様。
South EalingのCostaでフェイスカバーなしでテイクアウトした人が"a victory for common sense"「常識のための勝利」と言ったとか、Ealing BroadwayのCaffe Neroで「フェイスカバーがなくても誰からも注意されなかったよ」と言ったと記事になっています。それも、実名と年齢付きで。
概ねルールは守られているようですが、境界線で反骨精神を発揮する人もいるあたりがイギリスっぽいなと思うのです。
海外駐在に向けた準備品 (イギリスへの引っ越し)
駐在員としてロンドンに勤務することが決まって、引っ越したときの準備を思い出して書いてみます。
まず、必要なものの準備。前任者から聞いたり、ネット情報を参考にしました。
荷物はバッグに詰めて持ち込むもの(到着して直ぐに使える)、航空便で先行して送るもの(部屋が決まって入居する頃に受け取り)、船便で送るもの(1~2か月)の3種類に分けました。
ロンドンのフラット(アパート)は家具付きを利用する予定として、生活と仕事に必要なものを選びます。段ボール箱に入らない大きいものや、家具、電気製品、音楽・書籍類、予備の生活用品等は日本のトランクルーム等に保管、または処分です。自家用車は転勤の2週間前の車検更新時に売却してしまったので、その後の買い物や手続きのための移動では苦労しました。
仕事と生活に必要なものは日本でも使っていたものを送ります。直前に買いそろえたものは、主に衣類、靴、医薬品、海外用電気製品、台所用品、Simフリースマホ、旅行用品(異動後の出張用)、語学関係でしょうか。
以下、気がつくままに書きます。
- 衣類:日本人体型に合う服は日本でないと入手困難。日本でMサイズの場合はイギリスのSサイズを買えば太さは合うが、袖や裾が長すぎる。スーツはイギリスではサイドベント(切れ込みが横)が多いので、気になる場合は注意。着丈の短いスーツも危険。雨が多いイギリスのではフード付きのコートやパーカーは実用的。
- 靴:現地向け足先が細すぎるので、日本で買っておく方が無難(足形によりけりですが)。
- 医薬品:常備薬をそろえておくと安心。持病がある場合は主治医に相談。カットバンは日本製の方が使いやすい。日焼け止めも現地のものは白い。
- 歯ブラシ:イギリスで売っているのは大きすぎるので、持っていきたい。
- 海外用電気製品:イギリスの家庭用電源は230V (*注1 実質は240V、末尾に補足説明)。コンセントはBFタイプ(ヨーロッパではGタイプと呼ぶ)。PC、スマホ、デジカメ等のACアダプタは240Vでも大丈夫なものが多いはず(要確認)。乾電池はイギリスでも入手可能(単3はAA、単4はAAA等)。
- トランス、電源プラグ:念のため小電力用の小型変圧器(トランス)を購入したが、日本用の小さい電気製品が使えて便利。大電力用のトランスは重いので、必要だと思ったら予め買っておく(一時帰国時に買って持っていくのは大変)。BFタイプ用のアダプタも何個か買っておく(イギリスでは大型のものしか入手できない)。
- 炊飯器:現地のライスクッカーは日本人には評判が悪い。240V対応品(*注1)を予め買っていくか、日本用をトランスと併用するか。ロンドンの無印良品でも売っているらしい。 ※この辺の電気製品については末尾に示した別記事にしました。
- 電気カミソリ:100Vから240Vまで対応した海外旅行用が便利。他のヨーロッパの国々は220V(*注1)、アメリカは120V。
- 台所用品:調理が電気ヒーターの場合、丸底の中華鍋や土鍋は使えない。フライパンの蓋、弁当箱、シール容器は現地では入手が難しい。同じく、和食器、菜箸、落し蓋。
- 旅行用品:バッグ・ケース類、ガイドブックとか。
- 語学用品:実力と意欲に合わせて。スマホがあっても電子辞書は役立ってる。
- その他:眼鏡(現地でも買えるが慣れないと言葉が面倒)、食品(お好みで、日本のものを現地で買うと価格は約3倍)、洗濯ネット(売っていない)、タオルケット(同)、折りたたみ傘(日本製の方が小さくて丈夫、なお女性でも日傘を使っている人はいない)、文具(シャーペン、ホチキスは日本サイズは入手困難だが、無印良品にはある)、酸素系漂白剤、折り紙(現地で日本文化的なものを披露するのに役に立つとは…)、ポケットティッシュ(現地のものは小さくて使いにくい)
箱のティッシュペーパー、食品用ラップを持っていくのを勧める記事も多いのですが、これは現地のものでも足りました。確かに品質はもう一つなのですが、そこまで求めていなかったので。
しかし、どうも整理の悪い記事になりました。また、個別に別記事か、追記・改訂で補足したいと思います…
(BFタイプのコンセント、右側はアダプタをつけたところ)
(派手でギザギザで大きい歯ブラシ)
(*注1) イギリスの電圧は240Vなのですが、正式には230V、許容範囲+10%~-6%とされています。ヨーロッパ向けに販売されている230V用と表示された電気製品が使えて、ラベルには220-240Vと記載されているはずです。それらの事情や、事前購入した電気製品については次の記事にまとめました。
今も生きるスピットファイア(Spitfire)
前回の記事にしたキャプテン・サー・トム(Captain Sir Tom)が100歳の誕生日を迎えた4月30日、ニュースではご本人の映像はもちろん、ジョンソン首相からのメッセージ、体育館の埋め尽くした14万枚のバースデーカード等が紹介されました。(※1)
そして、英空軍が派遣した2機の第二次世界大戦当時の戦闘機が自宅上空を飛行する姿がライブで映し出されました。スピットファイア(Spitfire)とハリケーン(Hurricane)。この両機はドイツとの戦争において、英国の空を守り抜いた盾としてよく知られており、右手を上げて応えるキャプテン・トムも満足そうです。
(前方のこげ茶色がハリケーン、後方の黄土色がスピットファイア)
先週の7月10日はドイツ・イギリスの空の戦い、'Battle of Britain'「バトル・オブ・ブリテンが始まって80周年に当たる日でした。
これに合わせてBBCが制作・放映した特別番組が'Battle of Britain: The shoolgirl who helped design Spitfire'「バトル・オブ・ブリテン:スピットファイアの設計を助けた女生徒」。スピットファイアの設計チームの父親を数学の才能で手助けした13歳の少女の物語です。重量が増す不利があっても、機関銃を4丁から8丁にする有効性を計算で示し、ドイツ機との戦闘を有利にしたというものでした。
日本におけるゼロ戦のように、当時のイギリスを代表する戦闘機がスピットファイアといえるでしょう。
それもイギリス国民に歴史として記憶されているだけではなく、キャプテン・トムの誕生日のように、今でもいろいろな場面で目にすることができます。
例えば、今年7月10日のヴェラ・リン(Dame Vera Lynn)さんの葬儀。(※2)
7月6日のNHS(国民医療システム)の創立72周年記念日。
5月8日のVEデー(ヨーロッパ戦勝記念日)など。(※3)
2年前の2018年7月10日には英空軍設立100周年記念式典がロンドンのバッキンガム宮殿で開催され、3機のスピットファイアがランカスター(爆撃機)、ハリケーンと編隊を組んで飛行しました。
私はこの式典に向かう編隊飛行を会社の窓から見ることができました。歴史的な機体から、最新鋭のF-35(当時配備されていた3機全てがロンドン上空の式典に初披露)まで順番に飛んでゆくのを目にして、軍との距離が日本とは大きく異なっているのを感じたことを覚えています。
このようにスピットファイアを度々目にすることができるのも、貴重な機体をしっかりと整備、保存する熱意があってのことです。
今でも飛行可能なスピットファイアは約60機あり、その半数はイギリスにあります。
— Paul Beaver (@beaver_paul) 2015年9月14日
6機は英空軍が今でも保持しており、上記の式典等に用いられています。
また、訓練用の二人乗りスピットファイアに乗れる場所もあります。30分、2750ポンドとのこと。
この飛行可能なスピットファイアの実機は2017年の映画『ダンケルク』の制作にも用いられました。
私は上記のキャプテン・トムのニュースの音を聞いて、この映画と同じだと思い起こしました。ニュースでも、映画でもロールスロイス製エンジンの音について語られており、重要な要素になっています。アカデミー賞で録音賞、音響編集賞を受賞したこの映画の実力が発揮されている箇所の一つでしょう。
現在、飛行可能なゼロ戦は5機。内、元のエンジンを積んでいるのは1機しかなく、このようなリアリティーのある映画の製作は考えられません。また、その全てがアメリカにあり、ここでも大きな違いを感じます。
また、飛行できないスピットファイアはイギリス国内に46機。これはその一つ、ロンドンの帝国戦争博物館(Imperial War Museum)の展示です。
こちらはその展示の説明。'Agile, graceful and powerful'「敏捷で優雅で力強い」と表現されています。
この右側の写真は『ダンケルク』でも描かれた、大陸から撤退する兵士を載せたボートです。
この博物館にはゼロ戦の残骸も展示されているのですが、スピットファイアの雄姿に並べるのは忍びなく、また別の記事で…
さて、この'Spitfire'とは「火を吐く者」、すなわち「短気な癇癪持ち」という意味で、開発者はその命名が気に入らなかったといわれています。病のため完成を見ずに亡くなったのですが、それが救国の切り札として長く国民に愛され、記憶されたことを知れば、その仕事には十分満足されるのではないでしょうか。
(補足) ※1 キャプテン・サー・トム、※2 ヴェラ・リンさん、※3 VEデーについては下記の記事があります。