対コロナウイルスはどこまで徹底されているか (イギリスの規制取り締まりの実情)
一昨日、ジョンソン首相がTV声明で国民にコロナウイルス感染を抑えて冬を乗り切るため、ルールを守るようにと呼びかけました。生活を厳しく制限したロックダウンを回避して、経済、雇用、教育等が損なわれるのを防ごうというものです。
これを下記リンクの記事にまとめた際、実際に街中に変化があるか見ようと書きましたが…
残念ながら、地下鉄内のマスク(フェースカバー)着用義務の違反が減ったとは感じませんでしたね。
ジョンソン首相が語った通り大多数の人たちはルールを守っているのです。でも、ルールを守らない人も確かにいます。
コロナウイルスは自分でもそうと気づかない少数の感染者から閉鎖された室内の多くの人達に移される恐れがあるもの。だから、マスクをすることによって、そこに一緒にいる人を守るのです。
このポスターが訴えている通り。
上記の記事で、首相声明を要約した際に省いた部分があります。それは、
"And to those who say we don’t need this stuff, and we should leave people to take their own risks, I say these risks are not our own."
「こんな対策なんて必要ない、感染するリスクなど個人に任せておけばいいという人に対して、私はそれはその人だけのリスクではないと言いたいのです。」
"The tragic reality of having covid is that your mild cough can be someone else’s death knell."
「もしもあなたがコロナウイルスに感染していたならば、あなたの軽い咳が他の誰かの死を告げる鐘になるかもしれないという悲惨な現実があります。」
これを防ぐためにルールの違反者には罰金を科し、取り締まりの警察を増員すると首相は語ったのですが、ここにも省いた箇所があります。
"We will put more police out on the streets and use the army to backfill if necessary."
「我々(政府)は街により多くの警察を配します。さらに必要ならば軍隊で補います。」
マスクをする程度の守りやすいルールに限られた警察のマンパワーをさらに割くようなことをしてほしくないし、さらに軍隊を投入するような強圧的な事態を想像したくはありません。
ボリスもルールを厳しくすることに対する抵抗感は理解しています。
"But we have to acknowledge this this is a great and freedom-loving country ..."
「我々はこの国が偉大にして自由を愛する国であることを認識しています…」
"And of course I am deeply, spiritually reluctant to make any of these impositions, or infringe anyone’s freedom ..."
「もちろん、これらの規制や誰かの自由を侵害することには、私も気持ちとしてはとても抵抗があるのですが…」
なので、規則や罰則という強制ではなく、一人ひとりの意志の力を信じたいのでしょう。締めくくりとして、国民にこう呼びかけました。
"But now is the time for us all to summon the discipline, and the resolve, and the spirit of togetherness that will carry us through."
「今こそ、自制、決意、そして苦難を乗り切るための連帯の精神を、私たち全員が呼び覚ますときなのです。」
でも、現実は言葉の力だけでどうにかできるものではないのかもしれません。
思い起こせば、7月にパブ・レストランが再開したときのルールは、ソーシャルディスタンス(人との距離)は2m取るべきところ、取れなければマスクや衝立を使って1mまで緩和する、'1 metre plus'というものでした。
でも、実際にオープンしてしばらくしたら、そんなルールは忘れられたかのようになったのをあちこちで見かけました。
パブではカウンターや壁際にグラスを置いた立ち飲みスタイルで話に花を咲かせることが多いのですが、今回の規制強化でそれは禁止になり、テーブル席だけになりました。これでお店が受け入れられる客数が大幅に減ることになります。
また、マスク着用義務違反の罰金は初回100ポンド、繰り返すと最高3200ポンドになるという規則でした。
これで取り締まられた人がどの程度いたかというと、この記事によると警察発表ではわずかに46件(内、公共交通機関では38件)。これとは別にロンドン交通局発表の分が285件です。
10人に一人程度はマスクをしていない人がいるかもしれないのに、2ヶ月半でたったこれだけ。1日にわずか4人程度ではルールの破り得なのでは?
お店でのマスク着用も店には強制させる権力はなく、違反者がいても警察がいなければ罰金が適用されることはありません。
また、コロナウイルス感染者が少ない特定の国を除いて、外国から入国した人は2週間の自主隔離が義務化されていますが、これも追跡調査がほとんどされていないというニュースがありました。
結局、急に設けた規則に取り締まりが追い付いていないのが現状だったわけで、この夏の気のゆるみも加わって、感染者の急増を招いた原因の一つだったように思えます。
政府はこれから取り締まりを厳しくしていくのでしょう。違法なパーティー等の密告を推奨するような動きもあります。
あまりに締め付けが厳しくなりすぎて、反対運動が起きるような事態になっても困りますが、厳しいロックダウンをしないという道を取る以上、無法には断固とした処置が必要になってきているようです。
対コロナウイルスを訴えるジョンソン首相のTV声明
今日(9/22)の夜8時からボリス・ジョンソン首相がテレビ放送で声明を発表しますと前日からニュースが報じていました。コロナウイルス対策についての声明です。
イギリスのコロナウイルス感染者の増加は一向に治まらずに、1日当たりの新規感染者は4000人を超え、対策として新たな規制が始まってきました。
(イギリス全体でのコロナウイルス新規感染者の推移)
コロナウイルスに感染しても自主隔離しない場合に最大10,000ポンド(約140万円)の罰金が設けられ、学校・職場等を除いて6人を超えた集まりが禁止されました(6人ルール)。感染者が急増している地域では夜10時以降のパブ・レストラン等を閉店するといった制限が導入されています。
(新たな規制 -6人ルール- を報じる新聞)
テレビ放送の首相声明で、さらに厳しいロックダウン規制が発表されるかもしれないと固唾をのんで見たのがこれでした。
画面の向こうからじっとこちらを見つめながらジョンソン首相が訴えたのはこんな内容でした。
- コロナウイルスは大きな脅威ですが人類はこれを克服できます。実際に3月からの対策では、自己犠牲と団結によって何千人もの命を守ることができました。
- しかし、ソーシャルディスタンス(社会的距離)のルールの違反者も多く、ウイルスが再び急増しており、愛する家族を失うリスクが増しています。
- この戦いにおける最大の武器は、国民の良識とコロナウイルスに打ち勝つという決意です。
- そこで、より強固な対策を開始します - パブの深夜閉店とカウンター使用停止、フェースカバーの適用拡大、集合の6人ルール、そして在宅勤務の再開です。ルール違反に対しては最大10,000ポンドの罰金と警察の増員で臨みます。
- もし、さらに厳しいロックダウンが必要になれば、雇用や生活、人々の交流、子供たちの教育への脅威となるでしょう。皆がルールを守って協力することで、私たちは仕事を続け、店や学校を開き続け、国を前進させることができるのです。
- 私たちには保護具・病院の充実や新薬等、以前よりも優れたウイルス対策があります。そして、ワクチン開発にも努力しています。それが実現するまでの間、私たちは一人一人の意思と行動によって、お互いを守っていかなければなりません。
- これらのルールを守ることで一緒にこの冬を乗り切ることができます。それは困難な数か月ですが。
-
コロナウイルスとの戦いはまだ続きますが、素晴らしい日がまたやってきます。今こそ、皆で規律と決意、連帯の精神を呼び起こすときなのです。
これを見聞きして、政府の判断に安堵し、肯定的な気持ちを覚えました。
この声明にある規制内容は、既に開始されたものと事前の報道で予想された範囲にあるものでした。
コロナウイルスへの対策をロックダウンの形で厳しくすれば、既に落ち込んでいる経済がさらに大きなダメージを負い、精神的にも大きな苦痛になります。
なので、最小のルールを最大の規模で守ることで、感染を抑えながら、ようやく活気を取り戻してきた生活を守ろうというメッセージに共感することができました。
正直なところ、なるほどと思わせるようなメッセージ表現を得意とする、ボリスのパフォーマンスに載せられた気もしないわけではありませんが。
さて、このジョンソン首相の呼びかけが実際に功を奏するか…
明日、ロンドン中心部に行く際に、下記の記事で書いたような地下鉄内のマスク着用無視が減ったかで見てみたいと思います。
ロンドンのどんぐり・栃の実とリス
最近のロンドンの最高気温は概ね20℃から25℃くらい。下記の記事は急に冷え込んだときに書いたのですが、その後は少し例年よりも高い気温が続いています。
上の記事に書いたどんぐりが色づいてきました。
足元にもいっぱい落ちています。
これらのどんぐりをつける木はオーク(Oak)と呼ばれるナラ(楢)の木です。
日本でよく見かけるコナラと比べると、葉のぎざぎざが丸くて大きく、柏餅を包んでいる葉っぱ(つまりカシワの葉)のようです。
どんぐりは英語で'acorn'。辞書を見ると"the small brown nut of the oak tree, that grows in a base that is like a cup"。どんぐりの帽子は英語でも同じと思ってよく見たら、capではなくてcup(カップ)でした(笑)
こちらの子供たちはどんぐりにあまり興味を示さないのか、通りかかっても見向きもしません。少し拾って、ポケットに入れておきます。
もう一つ、前の記事に書いた茶色くなりかけた街路樹を見上げてみると、木の実が見えます。
足元にもあちこちに落ちています。
一見、栗のようですが、これはセイヨウトチノキ(西洋栃ノ木)の実。
フランス語ではマロニエ(marronnier)と書くと、東京・銀座のマロニエ通りを連想するかもしれません。でも、実際に現地に植えられているのは日本のトチノキと、近種のベニバナトチノキのようです。このトゲトゲの実が落ちてくると大変だからでしょうか。
英語では'horse chestnut'、つまり「馬の栗」。栗(chestnut)と違って渋くて毒もあるので簡単には食べられません。
日本では長時間渋抜きをしてから餅に混ぜて食べられるようにした栃餅があります。『モチモチの木』に出てくるのですが、じさまは大変な手間暇をかけているのだよ >豆太
これも拾っておきます。と思って、うっかりトゲに触ってしまうとその痛いこと…
さて、拾ったドングリを近所の公園に置いておくと…
リスが拾ってかじります。
かわいいと思って近づくと、木の上に逃げたり。
栃の実はどうか?
大きすぎるのか渋いのか、咥えますがすぐにはかじらず、どこかに持って行きました。
この通り、緑が豊富なロンドンにはリスがたくさんいて、身近な動物です。下記の記事で書いたハイド・パークやリージェント・パーク等、中心部の公園でもよく見かけるどころか、観光客がピーナッツ等をあげて近づいてくるのを楽しんでいたりします。
かわいいリスたちと身近に触れ合えるのはいいですね…
とは、簡単にはいかないのです。
ハイド・パーク等にはリスに餌を与えないように注意書きがあります。
一つはリスにかじられる危険のためですが、他にも理由があります。
まず、これらのリスによる被害があること。リスたちは家の屋根裏を痛めたり、配線をかじったり、樹木や庭を荒らしたりします。
下記のリンクはロンドン南東のBromley区のサイトですが、リスをpestの一種として如何にその被害を防ぐべきかが説明されています。これに似た注意が他のあちこちの自治体にあります。
Squirrels | Common pests | London Borough of Bromley
'pest' ⇒ "an insect or animal that destroys plants, food, etc."「植物や食物等を傷める虫・動物」
語源はあの恐ろしい病気のペスト(英語はplague)なので、まさに害獣。
そして、ロンドンにいるハイイロリス(grey squirrel、より正確にはトウブハイイロリス)がアメリカからの外来種であり、イギリス在来のキタリス(red squirrel)を絶滅危惧種に追いやっていること。
詳しくは別の記事にしようと思いますが、ハイイロリスは対策すべき外来生物として政府のリストにも挙げられています。
なので、近所に落ちている木の実だからといって、そばに持って行くのはこれっきりですからね >リスの皆さん
プレットのコーヒーが月20ポンド (Pret A Mangerのコーヒーサブスクリプション)
ロンドンでよく見かけるカフェのチェーン店の一つが'Pret'「プレット」こと"Pret A Manger"「プレタ・マンジェ」。サンドイッチとコーヒーがメインのお店です。
店名はフランス語で、英訳すると"Ready to Eat"。つまり「お食事が用意できました」。
紅色と白の星が目印で、ロンドンの街中や地下街、ショッピングセンター等、いろいろなところに展開しています。
公式ウェブページで数えてみたらCentral Londonに200店、Greater Londonにするとさらに40店なので、中心部に多いことがわかります。
そのウェブサイトによれば、1986年の創業以来、店内で手作りしたメニューと100%オーガニックのコーヒーを使命としているとのこと。コーヒーの売り上げで次世代のコーヒー農家を支援し、売れ残りはチャリティーにする等、社会貢献にも考慮したチェーンです。
https://www.pret.co.uk/en-GB/about-pret
そのプレットが新しく始めたサービスがこれ。"Your Favourit Ceffees, Now Endless"「今ならお気に入りのコーヒーをお好きなだけ」って?
これはコーヒーのサブスクリプション、つまり定額サービス。月額20ポンド(約2700円)でコーヒー類を1日5杯まで利用できるというもの(利用毎に30分間隔を空ける必要あり)。そして、何と最初の1か月は無料!
コーヒーもエスプレッソ、ラテ、カプチーノ等、いろいろな種類の本格的なものが楽しめ、アイスにもできれば、ミルク入りも当然可能です。そのコーヒーはバリスタと呼ぶ熟練者が抽出する香り高い本格的なもの。さらに紅茶やフラッペ、スムージーまでOKと嬉しいことづくめです。
これらのドリンクは2~3ポンドしますから、20ポンドの元はすぐに取れてしまいます。一杯はけっこうな量がありますし、それが1日5杯までフラット価格ですからね。
なので、このポスター。フラット・ホワイト(クリーミーなミルク入りコーヒー)を沢山飲んでもフラット・プライスだよとアピール。
このサービスを利用するのは簡単で、下のリンクのプレットのウェブサイトから名前、Eメールアドレス、クレジットカード等を登録するだけ。登録が完了すれば、EメールでQRコードが送られてくるので、それをレジのスキャナーにかざすだけでOKです。
https://www.pret.co.uk/en-GB/your-pret
最初の1か月は無料で、その後は1か月毎の自動更新ですが、いつでも好きな時にやめることができます。いたせり尽くせりでは?
だから、このポスター。"Endless Pret coffees. Yeah, we read it twice, too."「プレットのコーヒーを好きなだけどうぞ。ハイ、自分たちも二度見しちゃいました。」
このお店の、こんな洒落たブリティッシュ・ユーモアも好きなところです。
こんな食材を使ったポスターもこのお店ではお馴染み。
こちらが主力のサンドイッチ。ボリュームたっぷりで具材も豊富です。
他にもサラダやスープ、ホットサンド、フルーツ等もあります。
と、こんな風にPRめいたことを書くのは別にインセンティブがあるわけではなくて、純粋にお得なサービスだなと思ったから。
そして、このイギリスらしいお店が好きだから…
今回の大盤振る舞いはロックダウンで客足が減ったのを回復させ、一緒に他の食品メニューの需要も呼びたいのでしょう。
ロンドンの中心街に多くの店を展開していたプレットは、コロナウイルスの影響で厳しいビジネスを強いられています。
下の写真はレストラン再開前の6月のロンドンの金融街シティーの平日のランチタイム。以前なら道の右側に小さく見える星の看板のプレットにも大勢のビジネスパーソンが出入りしていたはずです。
ロックダウンが解除された今でも、在宅勤務を続けているオフィスは多く、客足は戻り切っていません。苦戦中のプレタ・マンジェは3000人近い人員削減を発表しています。
なので、このサンドイッチ発祥の地のイギリスのカフェチェーンを応援したい気持ちもあってご紹介した次第。日本で利用していただけないのが残念ですが…
再開した大英博物館に行ってみた
ロックダウンで長らく閉館中だった大英博物館(The British Museum)が8月27日から再開しました。コロナウイルスとの共存の今、どんな風になっているのかを見てきました。
大英博物館はロンドンで最も人気のある観光名所の一つですが、人数制限のため完全予約制になっており、インターネットで事前予約する必要があります。
この大英博物館のウェブページから、Plan your visit→Book nowと進んで、希望日、希望時間、チケット種類と人数の入力、バスケット確認、チケット送付先入力(名前、住所、電話番号、Eメールアドレス)と進んで予約します。
予約状況を見てみると、直近の週末は売り切れのことが多く一週間以上前もって予約する必要がありそうです。売り切れといっても、大英博物館は入場無料ですから気楽に予約している人がいるのかもしれませんが。
なお、大英博物館は5ポンドの寄付をお願いしており、その寄付を含んだ予約も可能です。私はメンバーとして年間64ポンドを支払っています。
予約が完了するとこんなチケットのPDFがEメールで送られてきます。
入口は南側の正面玄関のみで、ゲートで予約日時であることスマホで見せて入りました。手荷物チェックの後、建物入口へ向かいます。
建物正面はこんな感じ。この機会に工事をしているらしくシートで覆われており、建物の絵が貼られて、作り物みたいになっていました。
建物入口から入って左手に行くと、チケットチェックのカウンターがあり、スマホに表示したチケットのPDFをスキャンしてから順路に進みます。
中は下記のマップのように完全に一方通行になっていました。
一番人気の古代エジプト等は公開していますが、上階は閉鎖中のため、中東、アジア、ヨーロッパ等は見られません。人気の展示だったエジプトのミイラやルイス島のチェス駒は見られず、中国、日本、中東等の展示室にも入れません。
順路のスタートは大人気のロゼッタストーンです。いつもは大勢の人が貼り付いている展示ですが、人数制限のためゆとりを持って見ることができます。足元にソーシャルディスタンスの目印がありますね。
ここから順路に沿って進むと、エジプトの半分→アッシリア→ギリシャ・ローマ→エジプトの残り半分というという風になります。一方通行にするための苦肉の策でしょう。人が少ないのでじっくりと見ることができます。
一部、アッシリアのレリーフやアテネのパルテノン神殿の履歴等が展示されている行きどまりの小さい部屋には入ることができませんでした。
庭に抜けるドアは開けられ、通路にはファンがあって、換気に気をつかっていました。
公開しているスペースが減っているので、その分、いつもは駆け足で通り過ぎてしまいがちな展示室にも時間をかけることができます。
ここはギャラリー"Enlightenment"。大英博物館の設立当時の雰囲気がわかるようになっています。世界中から集められた標本があり、「博物学」とはこれだという感じ。
ロゼッタストーンのレプリカが置いてあって、ガラスケースに入っている本物の代わりに触ることができます。
残念ながら2階以上の展示室は閉鎖中のため、エジプトやメソポタミア等のミイラや小型の収蔵品、ルイス島のチェス駒を含むイギリス、ヨーロッパのコーナー、イスラム圏、中国、日本等の展示は見ることができません。
中央ホールにあるカフェ、ショップは営業していています。
見られなかった上階の展示品に関連したお土産品にも出会えます。
このように展示が限定されていたり、移動に制約があるとはいえ、それでも沢山の見どころがありますし、人が少ない分、ゆっくり説明を読みながら見ることができて楽しめます。大英博物館はすごいと再認識しました。
この記事に載せきれない展示もたくさんありましから、また別の機会にテーマ毎に書きたいと思います。
9月後半からは特別展も始まりますので、次の訪問も楽しみです。
イギリスのコロナ感染急増とマスクを着けない人達
イギリスのコロナウイルス感染者が急速に増加しています。昨日からの24時間で新たに確認された感染者は3497人!
https://coronavirus.data.gov.uk/casesよりイギリスの1日当たりの感染者の推移
8月前半は一日当たり数百人まで減っていましたから、9月の感染者急増は脅威的です。
イギリスでは一人が新たに感染させる人数を表す感染係数Rを流行の指標にしています。
イギリス政府の推計によると現在の感染係数は1.0から1.2の範囲で、このままの状態が続くと、7日から10日で感染者が倍増するとのこと。
3月は感染係数が3程度でしたから、それよりはまだマシですが、9月から学校が再開された影響でさらに係数が増加する恐れもあります。今や感染の抑制が効くかの瀬戸際とのこと。
そして、新規感染者の内訳を見ると、20代が多いのが明らかです。
BBCニュース https://www.bbc.co.uk/news/health-54116939 より感染者の年齢別比較(オレンジ色が7/24-8/11、青が8/22-9/7)
ハンコック保健相は感染流行の第二波が若者から始まったスペイン、フランスの例を挙げて、感染防止のルールを守るように呼びかけました。裏返せば、若者のルール違反が感染を増やしているといいたいかのようです。
テレビニュースではスペイン、フランスのリゾート地や繁華街に集まって羽目を外している若者たちの映像を感染者増加のニュースの背景で流していましたから、そのイメージが広まってしまっているように思えます。
これに対して、若者たちは自分たちだけが責められるのは不公平だといっているニュースもありましたが、実際のところはどうなのか?
ここからは個人的な印象の話です。
先週の平日の二日、ロンドンの中心部に地下鉄で出かけたのですが、先月との違いとして地下鉄の利用者が増えていることと、マスク等のフェースカバー(以下マスク)をしていない人が増えていることを感じました。
実際に9月7日の地下鉄利用者は前の週より10%増加したとのことで、職場復帰した人が増えてきているためと考えられます。
マスク着用のデータはわかりませんが、8月の前半には時々見かける程度だった着用していない人が、今回は各車両で普通に見かけるようになってきました。罰則付きで義務化されているにも関わらず。
人数が増えれば着用していない人を見るチャンスも増えるのでしょうけれど、感染に対する緊張感が薄れてきているのではないかと懸念してます。
そのマスクをしていない人の多くが若い人でした。若者の感染が増えているというニュースを聞いていましたから、年代に注目しながら、二日間に乗った7回の乗車中と駅構内でマスクをしていない人数を数えました。その結果は…
- 20代以下の男性 22人
- 20代以下の女性 5人
- 30代以上の男性 7人
- 30代以上の女性 2人 ※年齢は推測、ずらしている人を含む
圧倒的に20代と思われる男性が多いというものでした。
この観察だけで20代の男性がコロナウイルス感染防止のルールを守らず、それが感染増加に繋がっていると結論することはできないのですが、印象がとても悪くなったことは間違いありません。
まあ、わからなくもないのです。
長かったロックダウンとその後も続いている各種の規制、これまで楽しんできた夏のイベントやレジャーの中止や禁止で若者が不満を持っても不思議ではありません。
しかも、コロナウイルスが重症化したり命の危険が生じるのは高齢者ほど多いわけですから。
「俺たちが楽しむのを禁じられるのは、高齢者のための犠牲なのか?」
「別にコロナウイルスに感染しても、多くは症状がないか、出ても大したことないのに?」
「行き過ぎた規制で経済が落ち込む方が問題じゃないの?」
こう考えてルールを守る気がしなくなっているのではないかと。
ますく不着用の罰則もあるのですが、取り締まりが厳しいわけでもなく、実感はないでしょう。
政府の発言でも若者のメンタルヘルスに注意を払う必要があるとしています。
お互いに感染から守りましょうという意識付けだけでは、世代間の不満を解消することができなくなってきていると認識しているのでしょうけれど、それに加えるべき具体的な打ち手やゴールが見えないのが現状なのかもしれません。
(「マスクはあなたを守るために」とのメッセージ)
イートアウトtoヘルプアウトは大好評(イギリスの外食半額補助制度のその後)
イギリスの外食産業支援策、"Eat Out to Help Out"(「外食で助け合い」の意)の期間が終わりました。
8月中の月・火・水曜日に外食費用の半額を政府が一人最高10ポンドまで補助する、つまり半額で飲食できるという制度で、下記の記事にもしましたが、その手軽さと身近さが大好評でした。
その成果を政府がまとめた結果がこのウェブページです。
予想を上回る1憶食以上の利用があり、180万人の雇用を援助するものであったと自己評価しています。
これまでの申請件数は13万件、5憶2千2百万ポンド(約730憶円)で、さらに増える見込みです。
月・火・水曜日のレストラン予約数を前年と比べると、7月は54%も少なかったのが、8月は一転して53%も増加しました。特に最終日の8月31日月曜日は休日だったこともあり、前年の2倍以上の予約があったとのこと。確かに、街のあちこちに長い行列ができていました。
そして、補助が終った9月1日火曜日のレストラン予約は前年より2%増加。7月が大きく落ち込んでいたことを考えると、需要が戻ったかのようです。
キャンペーンが終って、レストラン側も今後の利用急減を心配していない訳ではありません。
この勢いが続くことを望んで独自の半額キャンペーンを継続しているところがいくつもあります。
"Eat Out" extendedといったキーワードで検索すると、頑張るお店を紹介したページが見つかります。そして、このキャンペーンがお店側にも好評であったことがうかがえます。
これはその一つ。ホームメードパスタのPasta Remoli (W5 2TD)。8月までと同じ月~水の50%割引を9月いっぱい続けてくれます。
こちらのインド料理店(Laguna, W13 9BD)も同じく9月の間延長するので、"Eat Out to Help Out"のステッカーを残しています。お酒は対象外ですが…
この制度が発表されたときは、外食を少し割引するだけで、まるで"Meal Deal" (ミール・ディール、サンドイッチと飲み物のセット割引)だと陰口をたたかれましたが…
(この記事の末尾に載せました)
結果的には外歩きの増える夏にうってつけの政策として広く受け入れられました。
このキャンペーンの顔ともいうべきリシ・スナク財務相(Rishi Sunak, Chancellor)はツイッターでこう語っています。
雇用を守るために、私たちは創造的かつ勇敢に、かつてどの国の政府も行ったことのないことを試みる必要があります。
レストランのオーナーやウェイター、シェフ、そして利用者の皆さんに対し、Eat Out to Help Outを受け入れ、景気回復を後押ししてくれたことに感謝します。
To protect jobs we need to be creative, brave and try things that no government has ever done before.
— Rishi Sunak (@RishiSunak) September 4, 2020
I want to thank everyone from restaurant owners to waiters, chefs and diners, for embracing Eat Out to Help Out and helping drive our economic recovery. https://t.co/6Ft7BQXbkF pic.twitter.com/6neIFjIw8r
ここで「受け入れる」と訳した'embracing'の本来の意味は「抱きしめる」。もう大好きという感じがします。
そして、このツイートの動画には"Looks like you were hungry"「あなたお腹すいてたみたい」。ええ、1億食も出たのですからね(笑)
まさにユニークなキャンペーンであった"Eat Out to Help Out"は、不幸な年の明るい夏を盛り上げた出来事として記憶されると思います。
そして、スナク財務相が次に力を入れている若年層の就職支援策「キックスタート」もよいスタートを切って欲しいと願います。
開始が遅れている日本の"Go To Eat"キャンペーンはさらに大きい2000憶円の予算が計画されていますね。ぜひ、広く活用され、誰もが楽しめる制度になりますように。